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トップページ こころJOB 初の国家資格から8年、心理職の働く環境は変わった? -年表と115名のアンケート結果からみる現在地-(前編)

公認心理師資格保有者が誕生してから8年余りがたちました。この間に、新型コロナウイルスの感染拡大と収束、AIによる第4次産業革命など、社会は目まぐるしく変化しています。一方、心理職の皆さまを取り巻く環境はどう変わったのでしょうか? 115名の方に回答いただいたアンケート結果をもとに、前・後編でお届けします。

はじめに

2026年度のスタートから2カ月ほどが経過しました。早くも夏のような陽気となっているように思います。

はじめましての方もお久しぶりの方もこんにちは。2年ぶりの記事掲載になりました、臨床心理士・公認心理師のライターにしむらです。

WEBメディア『こころJOB』のスタートは、翌々月に第1回公認心理師試験を控えた2018年7月でした。当時、錯綜する情報にソワソワしながら試験勉強をしていたことを思い出します。

あれから8年……読者の皆さまはどのように過ごされましたか?

学生から社会人になった方、若手から中堅になった方、ミドルエイジを生きた方、新たな資格を取得された方、転職・退職をされた方など、キャリアだけでなくライフステージが変わるのに十分な時間だったと思います。

筆者が執筆した記事のシリーズは2021年から始まり、産休・育休(1234)、SNS就職・転職などをテーマに据え、さまざまな角度から心理職の働き方を見つめてきました。

複数回取り上げた産休育休については、大きな進展がありました。とくに2025年から育児給付が「実質手取り10割」へ引き上げされたことは大きいでしょう。今や男性の育児休業は珍しくなく、ご自身が経験された方や、身近で見聞きされた方もいると思います。一世代前に出産を経験された方にとっては隔世の感があるのではないでしょうか。

では、心理職の働く環境はどうだろう?という問いが今回のテーマです。本記事では、過去8年間の出来事を振り返りながら、読者へのアンケート結果をもとに「心理職の働く環境は変わったのか」に迫っていきます。

あのときどうだった? 年表で振り返る心理職

第1回公認心理師試験が行われた2018年から現在まで(平成30年から令和8年)、心理職に関わる主な出来事と社会的な出来事、そして働き方に関する動向を年表に整理しました。

ご自身の年齢やライフイベントも合わせて見ていただくと、ミニ回想法が進みそうです。

まずはご覧ください。

心理職の変遷と社会の動き(2018年~2026年)
心理職に関する動き 社会的な出来事・メンタルヘルス・働き方に関する動向
2018年
  • 第1回 公認心理師試験の実施(9月)
  • 西日本豪雨
  • 記録的な猛暑
  • 「働き方改革関連法」が成立
2019年
  • 第2回 公認心理師試験の実施
  • 令和への改元
  • 消費税10%
  • 有給休暇の取得義務化
  • パワハラ防止法成立
  • 女性活躍推進法の改正(対象企業の拡大など)
2020年
  • 第3回 公認心理師試験の実施
  • 新型コロナウイルスの世界的な流行
  • テレワークとデジタル化(DX)が急加速
  • 子どもの自死が急増
  • 国内初、禁煙治療用アプリの保険適用
  • 労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止法)
  • 会計年度任用職員制度の施行
2021年
  • 第4回公認心理師試験の実施
  • 心理相談のオンライン化が普及
  • 東京オリンピック開催
  • パートタイム・有期雇用労働法の全面施行(不合理な待遇差の禁止など)
2022年
  • 第5回公認心理師試験の実施
  • 安部元首相銃撃事件
  • ロシアによるウクライナ侵攻
  • 第4次AIブーム(ChatGPTの登場)
  • 不登校数が20万人を超える
  • 「育児・介護休業法」の改正(雇用環境の整備、制度の周知の義務化、産後パパ育休の創設など)
2023年
  • 第6回公認心理師試験
  • Gルート(現任者特例措置)受験の最終受験
  • 資格成立5年後の見直し議論が本格化
  • 東京都スクールカウンセラー大量雇止め
  • イスラエルとパレスチナ武装勢力との衝突激化
  • 新型コロナウイルス感染症「5類」移行
  • 生成AIの業務利用が拡大
  • 男女間賃金格差の情報公表が義務
2024年
  • 第7回 公認心理師試験の実施
  • 厚生労働省「公認心理師養成等の在り方検討会」報告書発表
  • 診療報酬改定:小児特定疾患カウンセリング料、心理支援加算、精神科地域包括ケア病棟入院料、ベースアップ評価料(職員の賃上げの原資)などへの公認心理師の明記
  • 能登半島地震
  • 働き方改革関連法の改正(特定業種への時間外労働の上限規制の設置)
  • カスタマーハラスメント対策の議論が進む
  • 介護保険法:介護職員等処遇改善加算の開始
  • 小中学校の自死が過去最多
  • 不登校数が30万人を超える
2025年
  • 第8回 公認心理師試験の実施
  • 大阪・関西万博開催
  • 初の女性首相が就任
  • 育児・介護休業法の改正(柔軟な働き方の選定義務、看護休暇の対象拡大など)
  • ストレスチェック実施義務を全事業場に拡大することが決定
  • 65歳までの雇用確保の完全義務化
2026年
  • 第9回 公認心理師試験
  • 診療報酬改定:公認心理師による認知行動療法的アプローチの実施と疾患の対象追加
  • 他分野(がん・小児など)での加算拡充の議論
  • アメリカ・イスラエルとイランの直接交戦
  • 女性活躍推進法の改正(女性活躍に関する情報の公表など)
  • 超高齢社会が進む


こうしてみると「そういえば……!」と思い出すことがあるのは、筆者だけでしょうか。

資格に関しては、過去の記事で「プレ公認心理師世代・ポスト公認心理師世代」と呼びました。公認心理師の登録者数は約83,000名で、Gルートを用いた移行措置は2023年で終了し、翌年からは毎年1,000名程度の方が資格を取得しています。

※プレ公認心理師世代…公認心理師資格ができる以前から心理職に従事していた方
 ポスト公認心理師世代…公認心理師資格ができてから心理職に就かれた方

筆者は、ソーシャルワーカーや看護師として従事しながら公認心理師資格を持つ方に何度もお会いしました。2024年の公認心理師調査1)では、「心理に関する職種」以外の職種として雇用されているが一部業務のなかで「心理的支援業務」を担い従事している職場がある方は24.8%という結果でした。2022年に本サイトで行ったアンケートにおいて「(資格を取得したら)心理職以外の現職に役立てる」と回答した方の割合とほぼ同数です。他職種から公認心理師を取得した方がその後どうしているか、対談を行ったメンバーの現在も気になります。

この8年の間に、複数の災害と国際紛争、コロナ禍の拡大と収束があり、五輪と万博の開催、労働に関する法律も多数改正されました。技術面では、ICTの利用が進み、AIが身近なものになり、デジタルヘルスが診療報酬に反映されるようになりました。「女性活躍推進法」「育児・介護休業法」の改正により、女性や家庭内ケアへの支援が進んだ時期でもあります。

不登校児童生徒は年々増加し、子どもの自死数はコロナ禍が過ぎても上昇を続けていることが懸念されます。企業でのストレスチェックが全事業所に拡大していますが、メンタルヘルスによる1カ月以上の休職者がいる事業者数は1.52倍に増加しているという調査結果もあり2)、労働者の苦しい状況は続いています。

制度面では、令和6年度と令和8年度の診療報酬改定において、小児科での相談支援や施設基準を皮切りに、公認心理師が複数の算定要件に明記されたことは喜ばしいニュースです。心理職一人ひとりと職能団体の尽力が実った結果といえます。他職種と肩を並べ、職場内での立場を確かにし、業務を発展させる機会となったのではないでしょうか。そして、上述したメンタルヘルス対策へのニーズの高まりも関係するでしょう。

このように時代の要請に合わせて心理職が発展してきたことが理解できます。

後編では、当事者の実感はどうか、気になるアンケート結果をみていきましょう!



■後編を読む


引用文献
1)一般社団法人 公認心理師試験研修センター.令和5年度公認心理師活動状況等調査 報告書[要約版].
2)厚生労働省.令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要.(2026年3月31日閲覧)