あなたの会社の産業衛生は法に則り、きちんと機能していますか? ルーチンを見直すための視点をベテラン産業医が解説します。
最終回 ヒヤリ・ハット
みなさんの職場では、ヒヤリ・ハット報告書がありますか?この「ヒヤリ・ハット」は、文字通り、「突発的な事象やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりするもの」を指し、重大な災害や事故の一歩手前の事例の認知をいいます。こうした事象は収集・分析されて事故を未然に防ぐ取り組みに活用されます。
1件の重大なトラブル・災害の裏には、29件の軽微なミスがあり、300件のヒヤリ・ハットがあるといわれています(ハインリッヒの法則)。このヒヤリ・ハットの事例を、ヒヤリ・ハット報告書にて提出してもらい、収集・分析して重大な事故を未然に防ぐ活動が、ヒヤリ・ハット活動になります。
労働災害は、不安全な状態や不安全な行動の際に起こります。不安全な状態を共有し注意喚起するために、ヒヤリ・ハットマップを作成し災害を未然に防ぐ方法もあります。職場巡視の際には、このマップを基に状態を点検してみましょう。
不安全な行動としては、3H(さんエイチ)作業が挙げられます。3H作業とは、ミスや失敗を起こしやすい状況を簡潔にまとめた標語で、「初めてやる作業」「手順や方法が変更された作業」「久しぶりに行う作業」を指します。これらの作業においては、普段に比べ特にミスや失敗が発生しやすく、そこから事故や怪我といった災害につながることも多いため、3Hにあたる作業を行う際は、十分注意して取り掛かりましょう。
今回で最終回になります。長い間ありがとうございました。

本連載は『産業保健と看護』2022年14巻6号に掲載したものを再掲載しております。
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◆著者プロフィール
勝木美佐子(株式会社産業医かつき虎ノ門事務所 所長)
平成5年日本大学医学部卒。平成8年より産業医業務開始。運送業、清掃業、製造業、地方公務員、病院、通信業、遊技業、アパレル業、IT業、ホテル業など多岐にわたる産業の産業医業務に従事。労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医。