あなたの会社の産業衛生は法に則り、きちんと機能していますか? ルーチンを見直すための視点をベテラン産業医が解説します。
第25回 特殊健康診断
健康診断には、大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断とがあります。一般健診は全職員に対して行われるものですが、特殊健診は一定の有害業務に従事する労働者に対して行われます。この特殊健診の診断項目が、2020年7月に一部改正されました※。1971年に特定化学物質等障害予防規則(現・特定化学物質障害予防規則)として制定されてから40年以上が経過し、その間に化学物質による健康障害に関する事情が変化したため、全面的に見直されました。
大きな改正点は、労働者の化学物質へのばく露状況の確認のため、必須項目に「作業条件の簡易な調査」が追加されたことです。これに伴い、有機溶剤を扱う業務では必須項目であった「尿中蛋白」が削除されました。ほかにも、最新の医学的知見を取り入れ、健診項目の見直しがなされ、追加された項目と削除された項目とがあります。医学的知見の進歩のみならず、化学物質の使用状況の変化や、労働災害発生状況など、総合的に検討され見直されました。2021年現在のコロナ禍では、年に2回の特殊健診の受診計画の策定も困難かと思いますが、従業員の健康管理の基本の一つですので、しっかり受診してもらいましょう。
①前回の特殊健康診断以降の作業条件の変化
②環境中の当該物質の濃度に関する情報
③作業時間
④ばく露の頻度
⑤当該物質の蒸気の発散源からの距離
⑥保護具の使用状況
※特殊健康診断にて直近の改正状況
①特殊健康診断の実施頻度の緩和(令和5年4月1日施行)
②リスクアセスメント対象物質にかかる健康診断(令和6年4月1日施行)
本連載は『産業保健と看護』2021年13巻2号に掲載したものを再掲載しております。
本連載へのご感想をお待ちしております。ご感想はこちら
◆著者プロフィール
勝木美佐子(株式会社産業医かつき虎ノ門事務所 所長)
平成5年日本大学医学部卒。平成8年より産業医業務開始。運送業、清掃業、製造業、地方公務員、病院、通信業、遊技業、アパレル業、IT業、ホテル業など多岐にわたる産業の産業医業務に従事。労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医。