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トップページ 産業保健と看護 第15回 過重労働対策|そうだったのか! 今さら聞けない産業衛生のきほん

あなたの会社の産業衛生は法に則り、きちんと機能していますか? ルーチンを見直すための視点をベテラン産業医が解説します。

第15回 過重労働対策

2019年春、「働き方改革」により労働基準法が改正されました。改正の三本柱のひとつが「長時間労働規制」です。今回はこの「過重労働対策」についてお話しします。

長時間労働は、仕事時間が増加(業務量と負担の増加)し、仕事以外の時間が減少(睡眠時間や疲労回復時間の減少)している状態のため、健康に影響を及ぼす恐れのある状況と考えられます。実際、長時間労働が脳・心臓疾患のリスクを増加させることや、短時間睡眠が脳・心臓疾患リスクを増加させるという報告があります。また、睡眠不足による健康被害のリスクとして、糖尿病やがん、心臓病、免疫力の低下、記憶力の低下、精神の不安定などがあげられていますし、事故やケガなどの労災も長時間労働が一因となっている場合もあります。

健康障害や労働災害にも関連する長時間労働の対策は、労務管理だけではなく、産業衛生の観点からも重要です。ほかの対策と同様に、過重労働対策を衛生委員会で策定し、PDCAサイクル()を活用して長時間労働者数を減少させ、健康障害を引き起こさないように管理します。

「残業するなと言われるけど、業務量が減らないから、実質負担が大きくなっている」という悲鳴も現場から聞かれます。業務量については現場でのコントロールが難しいこともありますので、衛生委員会などで経営的観点からも調整するよう対策を講じることが効果的です。



本連載は『産業保健と看護』2019年11巻4号に掲載したものを再掲載しております。

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◆著者プロフィール

勝木美佐子(株式会社産業医かつき虎ノ門事務所 所長)

平成5年日本大学医学部卒。平成8年より産業医業務開始。運送業、清掃業、製造業、地方公務員、病院、通信業、遊技業、アパレル業、IT業、ホテル業など多岐にわたる産業の産業医業務に従事。労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医。