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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「米国の小児破傷風の症例」

矢野邦夫先生に「米国の小児破傷風の症例」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL35巻8月号の掲載の公開記事となります。

「米国の小児破傷風の症例」

 CDCが小児での破傷風の症例を報告しているので、紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/75/wr/pdfs/mm7514a2-H.pdf]。

破傷風

 破傷風は、破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する神経毒素によって引き起こされる、急性かつ重篤な神経筋肉疾患である。この細菌は、土壌、塵埃、家畜の糞便など、人々の身の回りのあらゆる環境に芽胞の形で遍在しており、日常的な負傷部位から体内に侵入する。芽胞が傷口から侵入して発芽すると、強力な神経毒素であるテタノスパスミン(tetanospasmin)を産生し、これが神経系に作用することで、致死的な症状を引き起こす。米国においては、破傷風含有ワクチン(tetanus toxoid-containing vaccine, TTCV)の普及により、小児の症例はきわめてまれなものとなっているが、ワクチンの接種状況は地域によって異なり、依然として警戒が必要な疾患である。

ワクチン未接種のリスク

 2024年、アイダホ州、ミネソタ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州の4州で計4人の小児破傷風症例が確認された。これらの患者の年齢層は5歳未満~15歳に及び、発症時にいずれの患者もTTCVの接種歴がまったくなかった。小児におけるTTCVの標準的なスケジュールは、生後2ヵ月から始まる5回のシリーズ接種であるが、これらの症例では適切な予防機会が失われていた。感染経路としては、電動スクーターによる足首の骨折、裸足でいた際の馬のひづめによる足の負傷、動物の骨による膝の穿刺傷などが推定されている。これらの受傷から発症までの期間は、7~10日であった。

現場で求められる迅速な創傷管理と予防措置

 臨床現場において最も重要なのは、受傷直後の適切な創傷管理と、必要に応じた予防措置である。破傷風のリスクが高い傷口とは、土壌、糞便、唾液などで汚染された創傷、刺し傷、挫滅傷、火傷、凍傷などが含まれる。これらの事例では、負傷後に医療機関を受診したにもかかわらず、保護者がTTCVや抗破傷風ヒト免疫グロブリン(tetanus immune globulin, TIG)の投与を拒否したケースが2例確認されている。これは現場の医療従事者にとってきわめて困難な状況であるが、汚染された創傷や深い穿刺傷に対しては、未接種者や不完全接種者へのTTCVおよびTIGの投与を遅滞なく提案することが、発症を食い止める唯一の手段である。

臨床経過と入院治療の実際

 破傷風を発症した4人の患者はいずれも全身性破傷風を呈し、背部、頸部、顎の痛み、筋痙攣、筋硬直、歩行困難といった典型的な症状を経験した。これらすべての患者が入院を要し、入院期間は最短で8日間、最長で45日間、平均して25日間に及ぶ長期の治療が必要となった。治療としてはTIGの投与と、将来の再感染を防ぐためのTTCVの初回接種が行われたが、退院後に入院リハビリテーションを必要としたケースも報告されている。今回の報告において死亡例はなかったが、破傷風の治療には多大な医療資源と時間が必要であり、患者およびその家族に重い負担を強いることになる。

感染後の免疫獲得に関する誤解とワクチン再接種の重要性

 医療従事者が正しく理解し、患者家族に伝えなければならない重要な事実の一つは、破傷風に罹患したとしても自然免疫は獲得されないという点である。つまり、一度破傷風から回復した患者であっても、適切なワクチン接種シリーズを完了しなければ、将来的に再感染するリスクが残る。これらの症例においても、退院後にワクチンシリーズを完了したのはわずか1人であった。また、破傷風は人から人へ伝染する疾患ではないため、集団免疫という概念が通用しない。個人の身を守るためには、各個人が最新のワクチン接種状態を維持する以外に方法はない。

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*INFECTION CONTROL35巻8月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。