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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「高齢者における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」

矢野邦夫先生に「高齢者における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL35巻7月号の掲載の公開記事となります。

「高齢者における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」

 日本では2026年4月より、高齢者の定期接種に用いるワクチンが、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)から20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)へと変更された。この制度変更は臨床現場に一定の影響を与えており、「PCV20を接種すれば追加接種は不要なのか?」「従来のPPSV23はもはや必要ないのか?」といった疑問が生じている。さらに、既接種者への対応やワクチン選択の基準についても整理が求められている。これらを理解するうえで、2026年2月にCDCが改訂した肺炎球菌ワクチンの推奨が有用である[https://www.cdc.gov/pneumococcal/hcp/vaccine-recommendations/index.html]。本稿では重要ポイントを整理して紹介する。

結論

 結論として、PCV20を接種した場合、原則としてその後の肺炎球菌ワクチンの追加接種(PPSV23を含む)は推奨されない。CDCの推奨では、50歳以上の成人がPCV20または21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)を接種した時点で、肺炎球菌ワクチンシリーズは「完了(complete)」とみなされる。これは、PCV20およびPCV21が高い免疫原性と広範な血清型カバーを有し、単回接種で十分な防御効果が期待できるというエビデンスにもとづくものである。したがって、PPSV23において行われていた5年ごとの再接種という概念は、PCV20やPCV21を選択した場合には適用されない。

ワクチンの種類と基本的な考え方

 肺炎球菌ワクチンは大きく、結合型ワクチン(PCV)と莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV)の2種類に分類される。PCVはT細胞依存性免疫を誘導し、より強固で持続的な免疫記憶を形成する。一方、PPSV23はより多くの血清型をカバーすることに主眼が置かれている。両者は単なるカバー範囲の違いにとどまらず、免疫応答の機序そのものが異なるため、患者背景に応じた適切な選択が求められる。特に高齢者では免疫応答の質が重要となるため、PCVの意義は大きい。また、長期的な予防効果の観点からもPCVの優位性が注目されている。

 PCVには沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)、PCV20、さらにPCV21が存在する。PCV21は単なるPCV20の拡張版ではなく、成人における疾患負担を踏まえて血清型構成が再設計されたワクチンであり、それぞれ異なる防御プロファイルを有する。

米国における65歳以上の接種推奨

 65歳以上で接種歴がない、あるいは不明な高齢者に対しては、PCV15、PCV20、またはPCV21のいずれかによる初回接種が推奨される。どのワクチンを選択するかによって、その後の対応は異なる。

 PCV20またはPCV21を選択した場合は、単回接種で完結し、原則としてPPSV23の追加は不要である。一方、PCV15を選択した場合には、1年後を目安にPPSV23を1回追加する必要がある。なお、免疫不全状態や人工内耳装用、脳脊髄液漏出を有する症例では、臨床判断により接種間隔を8週間まで短縮することも可能である。

65歳以上の既接種者における共同意思決定

 現場で最も高度な判断が求められるのは、すでに一定の接種を済ませている高齢者への対応である。具体的には、過去に年齢を問わず沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の接種を受けており、かつ65歳以降にPPSV23の接種も完了している状況が該当する。このようなケースでは、画一的に追加接種を行うのではなく、医療従事者と患者が対話を通じて方針を決定する共同意思決定(shared clinical decision-making)が推奨される。患者の現在の健康状態や生活環境における感染リスク、さらには重症化リスクを総合的に評価し、PCV20またはPCV21の追加接種を行うか、あるいは現状のままで経過観察するかを個別に判断することが重要である。

インフェクションコントロール35巻7号表紙

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*INFECTION CONTROL35巻7月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。