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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「国際線航空機および空港曝露を契機に発生したコロラド州の麻疹アウトブレイク」

矢野邦夫先生に「国際線航空機および空港曝露を契機に発生したコロラド州の麻疹アウトブレイク」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL35巻5月号の掲載の公開記事となります。

「国際線航空機および空港曝露を契機に発生したコロラド州の麻疹アウトブレイク」

 米国コロラド州で航空機利用者を起点とした麻疹アウトブレイクが発生した。未接種者で重症化が目立ち、尿検体RT-PCR(reverse transcription PCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)は軽症例や発症後の診断に有用であった。その詳細がMMWRに記述されているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/75/wr/pdfs/mm7504a1-H.pdf]。

 麻疹はきわめて感染力の強い、ワクチンで予防可能なウイルス性疾患である。米国ではワクチン接種プログラムにより、2000年以降は国内での感染伝播が抑制されてきたが、2025年に入り症例数は再び増加傾向を示した。2025年には全米で2,255例(うち死亡3例)が報告され、1992年以来最多の症例数となった。本稿では、2025年5~6月にコロラド州で発生した、国際線航空機および空港での曝露を起点とする麻疹アウトブレイクについて、感染対策の観点から概説する。

インデックスケースの同定と曝露状況

 2025年5月20日、CDC は麻疹発症中にデンバー国際空港を利用した旅行者の存在を、コロラド州公衆衛生環境局に通知した。インデックスケースは非コロラド州住民の未接種者であり、米国内の別州におけるアウトブレイク中に曝露を受け、国際線での帰路に発熱と咳嗽を呈していた。

 当該旅行者は5月13日に11時間の国際線でデンバーに到着し、市内ホテルに宿泊後、翌14日に国内線で他州へ移動した。この一連の移動に関連し、コロラド州内で9人の二次感染例と1人の三次感染例が確認されたほか、他州でも計7人の関連症例が報告された。

二次感染例の疫学的特徴と臨床像

 コロラド州で確認された二次感染者の年齢は1~55歳(中央値29歳)であった。二次感染者9人のうち、4人は曝露の2週間以上前にMMRワクチン2回接種を完了していた。残る4人は未接種、1人は接種歴不明であった。

 全症例で発疹が認められたが、ワクチン接種者では症状は軽度で、発疹も非典型的であった。一方、未接種者3人と接種歴不明1人の計4人(1~55歳)は、高熱、脱水、下痢、食欲不振、急性ウイルス性肝炎などのため、2~5日間の入院を要した。 

 感染場所の内訳では、4人がインデックスケースと同じ国際線フライトの搭乗者であり、そのうち3人はワクチン2回接種者であった。11時間におよぶ長時間フライトと、インデックスケースの咳嗽が感染伝播に寄与した可能性が指摘された。残る5人は空港のメインターミナルやコンコースでの曝露によるもので、そのうち1人は空港内店舗の従業員であった。

尿検体RT-PCR検査の意義

 本アウトブレイク調査では、診断面で重要な知見が得られた。通常、麻疹診断では鼻咽頭ぬぐい液や咽頭ぬぐい液が優先されるが、本事例では尿検体を用いたRT-PCR検査が症例把握に大きく寄与した。ワクチン接種者2人では鼻咽頭ぬぐい液が陰性であったが、尿検体では陽性が確認された。また、発疹出現から24日後であっても、尿からウイルスRNAが検出された。これらの結果は、軽症例や発症後日数が経過した症例において、尿検体が診断感度向上に有用であることを示している。

曝露後予防

 免疫のエビデンスがない接触者に対し、曝露後72時間以内のMMRワクチンが49人、曝露後6日以内の免疫グロブリンが12人に推奨され、高い実施率で提供された。航空機の接触者では、特定時点で推奨期間を過ぎていた人が多く、主に21日間の健康観察が行われた。

感染対策における教訓

 本事例は、ワクチン接種率の高い集団においても、航空機内や混雑した空港環境では麻疹が拡散し得ることを示した。MMRワクチン2回接種は予防効果が高いものの、ブレイクスルー感染は起こり得る。しかし、重症化は主として未接種者や接種歴不明者に限られていた。また、診断精度向上のためには尿検体の併用を検討する必要がある。

インフェクションコントロール35巻4号表紙

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*INFECTION CONTROL35巻5月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。