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トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing 生命の現場にも小さな花々|須賀健一|新生児医療の あ!のひと|#016

生命の現場にも小さな花々

 NICUには、理屈を超えて心が動く瞬間がある。かつて出会ったある父親は、SpO2が10%台まで下がり黒ずんでいく息子の頬に、突然キスをした。驚く私をよそに、次の瞬間、その子は大きな呼吸を始め、数値は劇的に上昇した。またある土曜の夜、牧師である父が歌う荘厳な讃美歌がNICU内に響き渡った。旅立つ子、優しく抱く母と、祈りを捧げる父。その神々しい光景は、今も私の心に強く刻まれている。

 こうした現場で私を導いてくれたのは、尊敬する先輩たちの背中だった。

 午前2時から翌昼まで一睡もせず赤ちゃんに張り付き、真っ白だったX線画像を“スクイーズ”で劇的に改善させた徳島大学病院NICUの中川竜二先生。先生は「看護師さんは神様」と口癖のように言い、検査値よりも彼女たちの「なんか変」という直感を信じて多くの命を救ってきた。

 高松赤十字病院NICUの幸山洋子先生のかっこよさは、退官時にも健在だった。「あたし、赤ちゃんのこと好きやん。それだけ。じゃ。」

 NICUは「想い」に溢れる場所だが、同時に常に「悔しさ」や「無理」な現実とも隣り合わせである。しかし私は、そこで諦めるのではなく、別角度のアプローチを模索し続けたい。

 現代社会では「仲間・時間・空間」という3 つの「間」が失われつつあるといわれる。だからこそ、どんなに未熟で障害がある赤ちゃんも、決して一人にさせない「幸福なNICU」を創造することが私の使命だと感じている。神奈川県立こども医療センターの豊島勝昭先生の「高い山を目指すことも大事だけど、足元に咲く花も大切に」という言葉を胸に、この場所で働けることに感謝している。徳島から埼玉に移り、期せずして教授職につくことになったが、いつかは優秀な後輩を愛でる「かわいいおじいちゃん」になりたいと願っている。


自治医科大学附属さいたま医療センター 周産期母子医療センター新生児部門 教授
須賀健一

     ●     

長女の手作り弁当

す!がおのひとこと

 埼玉で1年一緒に過ごした長男が無事大学に合格!「ありがとう」と言っ てくれたけど、こちらこそ感謝している。晴れて大学に合格して、川崎に引 越し予定の長女も埼玉にやってきた。手作り弁当まで作ってくれて感動した。 妻に何より感謝したい。


本記事は『with NEO』2026年4号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。