未来を育む仕事
学生時代の私は、正直に言うと成人医療にあまり未来を感じられませんでした。手術室での実習もどうにも苦手で、「自分は本当に医師としてやっていけるのだろうか」と悩んでいた時期もあります。そんな中で出会った小児科は、どこか温かく、前向きな空気に満ちていました。自然と「ここで働きたい」と、心から思えるようになったことを覚えています。
新生児医療を専門にした理由は、もっとシンプルです。学生時代にサッカー部で鍛えた体力を買われ、医局人事でNICUに配属されたのです。最初は戸惑いもありましたが、日々小さな命と向き合ううちに、気付けばこの分野の奥深さにすっかり魅了されていました。
NICUは、チーム医療の醍醐味がぎゅっと詰まった場所です。医師も看護師もコメディカルも、それぞれの専門性を持ち寄り、みんなで小さな命を守る――その一体感は、他ではなかなか味わえません。小さな赤ちゃんが少しずつ成長する姿を見るたびに、「この仕事を選んでよかった」と心から思います。自分より何十年も長く社会に貢献していく新生児たちの力になれることは、日々の努力に確かな意味を与えてくれます。
現在は、NICU を離れ、初期研修医のマネジメントに携わっています。新生児も研修医も、どちらも日本の将来そのものです。小さな命を守るだけでなく、若い医師たちが成長し、活躍できる環境をつくることもまた、未来への投資だと考えています。研修医一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できるよう、日々努力を重ねています。
これからは、日本の新生児医療をもっと世界とつなげていきたいとも考えています。海外との相互支援や人材交流が広がれば、日本の医師が国際的に活躍できる場も増え、世界中の赤ちゃんたちにもより良い医療を届けられるはずです。新生児医療の現場でも、教育の現場でも、若い皆さんと一緒に、そんな未来をつくっていけたらうれしいです。
香川大学医学部附属病院
卒後臨床研修センター 准教授
安田真之
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
移動の待ち時間の一コマ(直島/香川県)
す!がおのひとこと
瀬戸内海の島に出向く診療支援や健診は、移動は大変なのですが、どこか息抜きにもなっています。天気がいい日は海が本当にきれいで、船に揺られながら景色を眺めていると気持ちがゆるみます。長く通っていると島の人と顔見知りになって、船でふと挨拶されることがあってうれしいです。気付けば年々この活動が趣味みたいになっていて、大変さと楽しさが混ざり合う、不思議な時間です。
本記事は『with NEO』2026年3号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。