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トップページ こころJOB 初の国家資格から8年、心理職の働く環境は変わった? -年表と115名のアンケート結果からみる現在地-(後編)

公認心理師資格保有者が誕生してから8年余りがたちました。この間に、新型コロナウイルスの感染拡大と収束、AIによる第4次産業革命など、社会は目まぐるしく変化しています。一方、心理職の皆さまを取り巻く環境はどう変わったのでしょうか? 115名の方に回答いただいたアンケート結果をもとに、前・後編でお届けします。

■前編を読む

心理職の働く環境はよくなった? 115名のアンケート結果

115名の方にご協力いただきました。ありがとうございます。

短期間にもかかわらず多くの方が回答くださったのは、関心の表れでしょうか。自由記述にもたくさん記載をいただきましたので、代表的なものを取り上げます。詳細はこちらを参照ください。

回答者の年齢は20代から60代以上まで幅広く、40代、50代、30代の順に多くいました。心理職としての経験年数は、11~15年が最も多く、次いで5年未満、16~20年という結果でした。

保有資格としては114名が公認心理師資格を持っていました。内訳は、公認心理師のみ18名、臨床心理士60名、社会福祉士ないし精神保健福祉士18名、看護師8名、ほかという結果でした。3つ以上の資格をお持ちの方もいました。

アンケートでは以下についてうかがいました。


Q1 ご自身を含む心理職の働く環境はよくなったと思いますか?
Q2 仕事量(カウンセリング、心理検査、その他の役割を含む)は増加しましたか?
Q3 収入(給与・報酬)は上昇しましたか?
Q4 心理職について、心理職以外の方々からの理解や知名度は上昇したと思いますか?
Q5 これからの心理職について「不安に思うこと」を教えてください。
Q6 これからの心理職について「期待すること」を教えてください。

Q1 ご自身を含む心理職の働く環境はよくなったと思いますか?

【はい】……43名
【いいえ】…72名

このシンプルな問いには、【いいえ】が上回りました。

【はい】の自由記述には、「常勤の求人が増えた」「公務員で心理職の採用枠ができた」「国家資格により信頼性と職域が広がった」「オンラインカウンセリングや研修などの導入で、働くうえでの選択肢が増えた」という回答がありました。

【いいえ】には、「変わらない」「経験が短くわからない」と10名ほどから回答がありました。ほかには「報告書作成のための時間確保が職場内で理解されていない」「スクールカウンセリングの配置時間が減っている」「非正規が多く雇用が不安定」「制度上の枠組みは広がっているが扱う管理者の理解は進んでいない」という意見がありました。

確実に改善を感じている方は一定数いますが、国家資格ができ、また政府主導で働き方改革を推し進めているにもかかわらず、ネガティブな回答の方が多いことは、受け止める必要を感じます。


Q2 仕事量(カウンセリング、心理検査、その他の役割を含む)は増加しましたか?

【はい】……68名
【いいえ】…47名

【はい】の「仕事量の増加を感じている」ほうが上回りました。

【はい】の自由記述には、「心理検査や心理面接の件数が増加した」「カウンセリングの質が求められるようになった」「一般への理解が促進されたので利用のハードルが下がった」などがありました。「組織内のワーキンググループや他施設連携に関わるようになった」との回答もあり、公認心理師らしい連携を重視した働き方に移行した表れと思われます。

【いいえ】の自由記述では、「変わらない」という回答が多くありました。仕事量が減った理由としては、「勤務先の方針や人事の影響」「AIによる相談が可能になったためではないか」というものがありました。


Q3 収入(給与・報酬)は上昇しましたか?

【はい】……40名
【いいえ】…75名


収入面に関する回答は厳しい結果となりました。回答者のパターンはQ1とほとんどが重なっており、【いいえ】がやや多くなりました。

【はい】の自由記述では、「常勤の定期昇給のため」「公認心理師の資格手当によって増えた」「処遇改善加算などでわずかに上がった」「ヘッドハンティングで転職したため上昇した」という方がいました。

【いいえ】の自由記述では、「業務内容が増えても給与に反映されていない」「所属先の医療機関の経営状況が厳しく抑制されている」「非正規雇用のため据え置き」といった回答がありました。

大手企業においては、給与のベースアップや新卒者の初任給が過去最高などと報道されているように、上昇傾向にあります。前編の年表に挙げたように、医療業界ではベースアップ評価料、介護業界では処遇改善加算ができました。他方で、2025年度の医療機関の倒産数は過去最多であり、苦しい経営状況の影響を受けている心理職がいると思われます。


Q4 心理職について、心理職以外の方々からの理解や知名度は上昇したと思いますか?

【はい】……70名
【いいえ】…45名


ここは【はい】が上回りました。

【はい】の自由記述では、「一般や他業種に知られるようになった」「職場の他職種とのコミュニケーションのなかで心理業務を発信することで理解度が上がった」「スクールカウンセラーの配置を経験した世代が増えたためではないか」などの回答がありました。

【いいえ】の自由記述では、「国家資格があることがほとんど浸透していない」「カリスマの名前だけ広がっている」「臨床心理士との違いが知られていない」「職場内でも理解されていない」という回答がありました。

筆者の個人的な回答は【いいえ】です。精神科・心療内科や教育機関など元から心理職がいる職場では一定の知名度は維持していますが、ほかでは低いことは変わっていない印象です。公認心理師資格ができてからは、臨床心理士との違いを加えて説明するようになりました。ただ、国家資格ということで一目置いてもらえるようになったと思います。


Q5 これからの心理職について「不安に思うこと」を教えてください。
Q6 これからの心理職について「期待すること」を教えてください。

上の2つの質問では重なる部分が多いため、1つにまとめて紹介します。

最も目立ったのは「雇用の安定性」と「質の担保」でした。過去の連載を通じてこのことばかり書いているような気がしますが、「いつまで雇用が不安定と言い続けなければいけないの……」と思います。

公認心理師は資格取得までの時間や労力が多いにもかかわらず、収入や待遇に満足している方は少ないことが本アンケートであらためて浮き彫りになりました。前述のとおり、診療報酬への反映や企業での仕事の機会が増えてきたことはうれしいニュースです。しかし、残念ながら恩恵を受けているのはまだ一部で、全体的に働く環境の改善には至っていないと感じます。

「質」の面では、公認心理師は更新制度がないため研さんが不十分な現職者が増えるという懸念から、臨床心理士や公認心理師の養成を止める学校も出ているとの情報もありました。少子高齢化が進むなか、心理職を質量ともに維持していけるかの不安は否めないでしょう。

また、AIの発展により心理相談へのニーズの減少を懸念する回答が複数ありました。ユーザーにとっては、相談予約が取れない、近隣にカウンセリング機関がない、相性のよいカウンセラーに出会えるか心配といった場合にも、スマートフォン1つでアクセスできるAIチャットは身近な相談相手になりえます。せっかくなので、AI検索で「現段階で対人カウンセリングの需要が減ったか?」と尋ねたところ、明確な論文やデータはないという回答でした。筆者の知人はAIを「壁打ち」相手にして考えを整理していると言っていました。今後、研究が進んでいくと思いますが、どう住み分けるかがカギになるのではないでしょうか。

おわりに

アンケートの結果、安定性をもった環境で前向きに働く層と、不安を抱えながら頑張っている層がおり、数では後者が上回ることがわかりました。

なぜ後者が多いのか。今回は雇用形態と職域を尋ねておらず分析には限界があります。ただ、自由記述の内容から推察すると、常勤と非正規雇用の格差が続いているからではないかと考えます。

これは心理職に限らず、ほかの業種でもよくみられることです。しかし、公認心理師資格取得まで6年間を要することを考慮すると、厳しい現実と言わざるを得ません。ただ、日本臨床心理士会が2024年に公表した調査1)では、常勤勤務者の割合が前回調査よりやや増加しており、変化の兆しも見えます。

2024年に起こった東京都によるスクールカウンセラーの大量雇止めは大きな話題になりました。現在も係争中ですが、当事者の支援を行った心理職ユニオンは、翌年度以降、不可解な雇止めはかなり減ったことを報告しています。

会計年度任用職員制度については、2024年6月に総務省が採用回数の上限を撤廃したことに全国の自治体が続いています。ある調査では約7割の自治体が上限をすでになくすなど、具体的な動きが進んでいるようです。これには少子化による人材不足を補いたい雇用者側の事情もありますが、雇用不安を抱える心理職とっては前向きなニュースです。数年後に同様のアンケートをした場合は「働く環境はよくなりましたか?」に【はい】が増えることを期待します。

筆者は、国家資格になることで心理職の働く環境はもう少しポジティブな変化が生じるのではないか思っていました。それは楽観的な願望であったと今は思います。一方、年表とアンケート結果をみることで、変化は少しずつ起っていると実感しました。時間がかかり、目まぐるしい社会の動きによって揺らぐこともあります。個々の現状や受け止めには違いがあることがわかりましたが、後退しないことが肝心です。日々の仕事を積み重ね、成果と課題を見える形で周囲や社会へ伝えていくことは、働く環境の底上げにつながるのではないでしょうか。

 読者の皆さんはこの結果をどう感じましたか? ぜひ、ご意見やご感想などをお聞かせください。



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引用文献
1)一般社団法人日本臨床心理士会.第9回 臨床心理士会動向調査.2024.

参考文献
・独立行政委員会 労働政策研究・研修機構.会計年度任用職員制度の再任用の上限見直しの検討状況を調査/自治労連.(2026年3月31日閲覧)
・厚生労働省.働き方改革 特設サイト.(2026年3月31日閲覧)
・厚生労働省.仕事と家庭の両立の取り組みを支援する情報サイト 両立支援のひろば.(2026年3月31日閲覧)
・厚生労働省.令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版).(2026年3月31日閲覧)
・厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について 第2 改定の概要.(2026年3月31日閲覧)
・文部科学省.令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査概要.(2026年3月31日閲覧)
・帝国データバンク.医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年).(2026年3月31日閲覧)
・厚生労働省.令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要.(2026年3月31日閲覧)
・総務省.会計年度任用職員制度等.(2026年3月31日閲覧)