ふたごちゃんやみつごちゃんはかわいくて、ママも元気、そんなイメージをもっている助産師や医師もいるかもしれません。しかし、多胎ママは子どもを連れて外出できるようになるまで大変な育児を経験していることに、なかなか専門職が気付けていないのも現実です。多胎児は子ども虐待のリスク要因として挙げられ、現在でも多胎児、特に乳児の虐待は後を絶ちません。多胎の母親は単胎の母親と比べると、うつ傾向や育児ストレスが高いことは国内外で報告されています。子どもが生まれてからの育児支援では、多胎児の場合、支援の機会を逃してしまうことになりかねません。妊産婦への妊娠期からの切れ目ない支援が叫ばれて久しいですが、多胎妊産婦の支援こそ妊娠期から始める必要がありますし、そこで重要な役割を果たすのが周産期の医療職だと思います。今回の特集では、多胎の周産期管理の専門家にご執筆いただきました。妊娠期から多職種で連携し、ふたごちゃんやみつごちゃんの健やかな成長とご家族の健康の支援を実践できればと思います。
服部律子
多胎妊娠のほとんどは双胎妊娠ですが、双胎妊娠でも頻度は1%程度であり、妊娠・出産・子育てに関する情報は少なく、妊婦だけでなく医療従事者でも情報弱者になりかねません。また、多胎妊娠を告げられた妊婦や家族はうれしい反面、さまざまな不安を抱えています。今回の特集では、皆さんの情報のブラッシュアップのお手伝いとして、多胎妊娠の生理学、周産期リスク、外来や入院そして分娩時の管理、新生児の管理に加えて、産後のメンタルヘルス、母乳育児や家族支援、そして育児支援など、多胎妊娠ならではの特徴や私たちが知っておくべきことなどを、一線で活躍されているエキスパートの方々から解説していただきました。多胎妊娠の切れ目ない支援に向けて、知識の整理と実践に役立ててください。
村越 毅
プランナー
●神戸女子大学看護学部教授/日本多胎支援協会理事
服部律子
●聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター 産科部長
村越 毅
本記事は『ペリネイタルケア』2023年8月号特集扉からの再掲載です。