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トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing 世界の仲間と創る未来。|嶋岡 鋼|新生児医療の あ!のひと|#013

世界の仲間と創る未来。

 世界では、1年間に約230万人の赤ちゃんが亡くなっています。生まれたその日に亡くなってしまう赤ちゃんは約100万人、14秒に1人の赤ちゃんがこの地球上のどこかで亡くなっています1)。いまだ、5歳未満の死亡の半分近くは新生児期の死亡で、それを改善することは世界の喫緊の課題です。全世界の新生児死亡の原因の第1位は早産・低出生体重児で、全体の約37%を占め、その次に多いのが分娩中の問題・新生児仮死で約25%です2)。国際連合はSDGsにおいて2030年までに全世界の新生児死亡率を1,000出生当たり12以下に下げる、という目標を掲げていますが2)その目標を達成できる見込みは薄く、アフリカや東南アジア、南アジアの領域では特に厳しい現実があります。

 筆者が新生児蘇生法(NCPR)に出会ってから15年以上が経ちます。その社会的なインパクトの大きさ、シミュレーションの技法に感銘を受け、自身のライフワークにしようと決めました。ここ10年は、その価値を世界に伝えようと、ブータン、カンボジア、ラオス、モンゴル、タンザニア、インドネシア、そしてネパールと、たくさんの国で新生児蘇生法を現地の医療者に伝える活動をしてきました。発展途上国の医療を取り巻く環境や文化は、日本のそれとは大きく異なります。現地の医療者と対話し、思いを聞き、背景や環境に合わせた講習を組み立てることが大切と考え、何度もその国を訪れ、現地の医療者との対話を繰り返してきました。そのなかで気付いたことは、どの国でも現場にいる医療者は血の滲むような努力をし、現実と向き合って頑張っている、ということです。手の届かない命に向き合い、傷ついた思いを抱いて、それでもなんとか医療を改善しようとしている……その情熱に触れると、「私も頑張らなくては」という思いになります。

 新生児蘇生法を伝えたその先には何があるのでしょうか。赤ちゃんの命を守った医療者のホッとした、でも誇らしげな姿。赤ちゃんを胸に抱え、その誕生を祝福するお母さんとそれを見つめる家族の姿。救われた命が紡いでいく未来。今日もPCに向かい、教材スライドを作りながら、そんな世界を想像してニヤニヤしています。

参考文献
1)United Nations Inter-Agency Group for Child Mortality Estimation(UN IGME), Report 2024. Levels and Trends in Child Mortality. 2025. https://data.unicef.org/resources/levels-and-trends-in-child-mortality-2024/[2025. 10. 28]
2)World Health Organization. SDGs Target 3.2:End preventable deaths of newborns and children under 5 years of age. https://www.who.int/data/gho/data/themes/topics/sdg-target-3_2-newborn-and-child-mortality[2025. 10. 28]


国際医療福祉大学 塩谷病院 小児科 副部長/日本周産期・新生児医学会 新生児蘇生法委員会 EIT(教育普及に関する)ワーキンググループ 委員長/認定NPO法人あおぞら プログラムディレクター
嶋岡 鋼

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現地にて新生児蘇生法の講習を行う様子(筆者は左から2番目)

す!がおのひとこと

 バイク、ギター、バンド、スキー、ちょっと古い車いじり……なんでもかんでも面白そうなものに挑戦していた時期を通り過ぎて、最近はあまり趣味には時間を費やさなくなりました。年齢を重ねてそれ相応に穏やかに……というのであればよかったのですが、そうではなさそうです。単純に海外の案件で世界を飛び回っていて時間が作れないだけです。どんどん拡散していく自分の活動に大きな期待とちょっとの不安を抱えつつ、世界をほんの少しでも良い方に変えられたら、と思いながら日々を過ごしています。


本記事は『with NEO』2026年1号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。