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トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing 周産期医療に魅せられて|小澤悠里|新生児医療の あ!のひと|#012

周産期医療に魅せられて

 新生児医療に携わるようになって10年以上が経ちました。必死で走ってきて、今でも走っている最中なのでまだ語れることは少ないですが、私が今感じていることは、周産期医療に携わることができて、この道に導いていただいた多くの出会いに日々感謝しているということです。最初の出会いは、神奈川県立こども医療センターでのレジデント時代でした。当時は24時間オンコール、超未熟児が生まれたら72時間は泊まりがけで診療するという時代でした。レジデントは超未熟児に気軽に触れることは許されず、重症児ばかりがいる緊迫したNICUはレジデントにとってつらいといわれる研修でした。当初、私は新生児科を専攻することはないだろうと思っていました。そのため、「3カ月間の研修なら、つらくてもずっとNICUに張り付いてみてみよう」と心して向かいました。ところが、つらいと思っていた研修期間には毎日ドラマがあり、必死に働く先生方がいて、私は泣いたり感動したりで本当に充実した時間を過ごしました。

 新生児(小児科)医として初めてお看取りさせていただいたのもNICUでした。きょうだい看取りを決めた家族は最期の日にきょうだいを連れてきて、一緒に穏やかにお看取りしました。その瞬間に立ち会うことができて、私は家族と一緒に涙しました。また、通常、レジデントは経験できない超未熟児の蘇生を、フェローの先生にサポートしていただきながら一緒に行いました。震える手で挿管し、うまくいったときは皆で喜びました。ほかにも、夜中に運ばれてきた総肺静脈還流異常症(TAPVC)の児を必死で蘇生して手術につなげたこと、クリニックからの緊急要請で駆けつけたけれども救えなかった仮死のお子さん……わずか3カ月だと思っていたNICUでの研修にまさにどっぷり浸かり、終わるころには新生児科医になりたいと思っていました。そこでの患者さんとの出会い、先生方との出会いで今の自分があると思っています。

 それから自分の出産、子育てを経て、今でもこの命が誕生する素晴らしい瞬間に立ち会うことができる職業に就かせてもらったことに感謝しています。また、主人は胎児診療科医であり、今では多くの患者さんや先生方と家族ぐるみでつながらせていただいています。そんな周産期医療の魅力に私は取り憑かれ、走り続けています。


国立成育医療研究センター新生児科
小澤悠里

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す!がおのひとこと

 6歳と4歳の娘を子育て中。忙しい毎日でも、彼女たちに励まされ、癒やされ、支えてもらっています。


本記事は『with NEO』2025年6号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。