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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「HIVの非職業曝露後の予防内服」

矢野邦夫先生に「HIVの非職業曝露後の予防内服」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL34巻8月号の掲載の先行公開記事となります。

「HIVの非職業曝露後の予防内服」

 CDC が非職業曝露(性行為、薬物注射など)によるHIV 感染のリスクを減らすための曝露後の予防内服(Nonoccupational postexposure prophylaxis, nPEP)に関するガイドラインを改訂したので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/74/rr/pdfs/rr7401a1-H.pdf]。

予防内服が推奨されるHIV曝露

 HIV感染者またはHIVステータス不明の人物の血液、性器分泌物、またはその他の潜在的感染性体液への非職業曝露において、実質的なHIV 感染のリスクがある状況でnPEP が推奨される。具体的には、無防備な肛門性交や腟性交などがあげられる。ヒトによる噛みつき(血液曝露がない場合)、キス、相互マスタベーション、涙、汗、尿、鼻汁、唾液などの体液への曝露(血液混入がなく、非切創皮膚または粘膜が影響を受けていない場合)は、ルーチンにはnPEPが推奨されない。これらの曝露によるHIV 感染のリスクは無視できるほど低いからである。また、曝露源の人物が持続的なHIVウイルス抑制(HIV治療が6ヵ月以上、一貫した高い抗HIV薬の服薬アドヒアランス、過去1年間のすべての検査でHIV RNA 200コピー/mL 以上または検出限界未満)を達成している場合も、性的曝露後のnPEPはルーチンには推奨されない。このような状況では性的にはHIV を感染させないからである。

3剤レジメンの推奨

 現在の成人HIV治療ガイドラインでは、2剤併用(ドルテグラビル/ラミブジン)が初期治療レジメンとしてあげられているが、初期治療として使用する場合の注意事項(「HIV RNA が500,000コピー/mL を超える場合は使用しない」「HIV遺伝子型耐性検査の結果が得られる前には使用しない」など)があり、nPEPでの使用に関するデータがないため、nPEPレジメンとしては推奨されない。3剤レジメンが推奨される根拠は、HIV治療における初期治療として3剤以上の併用がウイルス複製を最大限に抑制するというデータからの外挿である。また、2剤レジメンと比較して、3剤レジメンは耐性ウイルスを獲得するリスクに対してより高い防御が期待される。nPEP は短期間(28日間)の内服であるため、3剤レジメンによる累積毒性のリスクは小さい。

推奨レジメン

 nPEPにはインテグラーゼ鎖転移阻害薬(INSTI)1剤に、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤を組み合わせたものが推奨される。具体的には「ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド」または「ドルテグラビル+(テノホビルアラフェナミドまたはテノホビルジソプロキシルフマル酸塩)+(エムトリシタビンまたはラミブジン)」が推奨される。

代替レジメン

 ブーストされたプロテアーゼ阻害薬とNRTI 2剤の組み合わせが代替レジメンとしてあげられる。レジメンの例としては、「ダルナビルとリトナビル(DRV/r)+(テノホビルアラフェナミドまたはテノホビルジソプロキシルフマル酸塩)+(エムトリシタビンまたはラミブジン)」がある。代替レジメンは、推奨レジメンが利用できない場合や、ほかの要因によって推奨レジメンが不適切な場合に考慮される。

内服期間

 nPEPの推奨される内服期間は28日間である。これは動物データに基づいているが、実際の使用においては、より実践的な理由から30日間の処方が行われる場合もある。最初の1回量は、曝露後可能な限りすみやかに、理想的には24時間以内、遅くとも72時間以内に内服すべきである。初回の内服は、HIV検査などの結果を待たずに開始されなければならない。

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*INFECTION CONTROL34巻8月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。