はじめに
がんばりっこの毎年恒例の取り組みのひとつに「高尾山チャレンジ」があります。2016年にスタートし、これまでに14回チャレンジしています。2025年5月は約30名でチャレンジしました。登山家3名、医師4名、看護師1名の応援団とともに、にぎやかに頂上を目指しました。
開催のきっかけ
この活動のきっかけは、私自身が「高尾山に登ってみたい」と思ったことでした。でも1人だと、天気が少し悪ければ「また今度にしよう」と先延ばしにしてしまう。だから「みんなで行こう」と声を掛けました。誰かと約束すると、「行く理由」になる。そうして始まった登山が今では多くの家族が楽しみにしてくれる毎年のイベントになりました。
高尾山チャレンジ
参加者の中には、全盲で音に敏感ながんばりっこもいます。その子のご家庭は、できるだけ静かな環境での生活が「その子にとっての快適さ」だと考えていました。けれど、登山中のガタガタ道でその子が声をあげて笑った瞬間、「こういう刺激が好きなんだ」と親御さんは気付くことができました。それをきっかけに、家族でいろんな場所に出掛けるようになったそうです。
また、登頂した際に「私たちも外に出ていいんですね」と話してくれた家族もいました。きっとその一言には、日々のためらいや不安、周囲との距離感が込められていたのだと思います。「そんなの当たり前でしょ」と言ってしまえばそれまでですが、実際には「出掛けること」そのものが大きな挑戦になることもあるのです。
熊本地震のあと、ある集いで「災害時の避難」について話していたときのこと。ある親御さんが「避難所に行ったら迷惑になるかもしれない、人の目も気になる。だから家に残ると思う」と言いました。その言葉には、外に出ることへの不安が色濃くにじんでいました。そんな声に触れるたび、「楽しい体験」がもたらす前向きな気持ちや「自分たちも大丈夫かもしれない」という感覚の大切さをあらためて感じます。
このチャレンジは、「みんなでやってみよう!」と、寝たきりの子も、装具をつけた子も、視覚に障がいがある子も一緒に挑戦します。登山ボランティアや応援団、参加者全員がフラットな関係で関わることを心掛け、「支援する・される」ではなく、「楽しいから参加する」ことを何より大切にしています。そして、日常でつい口にしがちな「ごめんなさい」は、この場ではなるべく「ありがとう」に言い換えるようにしています。その方が、何だかあたたかくて、うれしいから。
おわりに
高尾山チャレンジは、日常のチャレンジへの一歩になり、「いざという時」の行動への安心にもつながる場になっています。「子どもの可能性を再発見できた」「外に出ることへの考え方が変わった」——そんな声が毎年届き、活動の意味をあらためて実感しています。
他県からも開催希望が寄せられており、2025年4月には熊本で初のデイキャンプにも挑戦しました。来年も開催予定です。がんばりっこの家族にとって、新しい一歩や視野が広がるきっかけになったらうれしいです。これからも、全国各地で笑顔のチャレンジを続けていきたいと考えています。
Take home message
寝たきりだって山を登れる。
“笑った”も“できた”も、“やってみた”から始まります。
支援とかケアとか難しく考える前に、一緒にやってみませんか?
そんな一歩が、きっと次の一歩を連れてくるから!
※本記事の写真は許可を得て掲載しています。