MENU
新規会員登録・ログイン
トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの季節的な流行パターン」

矢野邦夫先生に「ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの季節的な流行パターン」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL34巻7月号の掲載の先行公開記事となります。

「ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの季節的な流行パターン」

 CDC が米国におけるヒトメタニューモウイルス(hMPV)とRSウイルス(RSV)の季節的な流行パターン(2014年7月から2024年6月まで)について分析したものを公開しているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/74/wr/pdfs/mm7411a1-H.pdf]。

はじめに

 hMPVとRSVはともに急性呼吸器疾患や下気道疾患を引き起こすウイルスであり、ニューモウイルス科(Pneumoviridae family)に属している。以前は、hMPVは冬から春にかけて、RSVは秋から春にかけて流行するのが一般的であったが、COVID-19パンデミックはこの季節性に大きな影響を与えた。

COVID-19パンデミック以前の流行パターン(2014年7月~2020年6月)

 hMPVのシーズンは1月上旬から6月上旬までであり、3月下旬がピークであった。RSVのシーズンは12月下旬から4月下旬までであり、12月下旬がピークであった。COVID-19パンデミック以前は、hMPVのシーズン開始はRSV のシーズン終息の13.5週間前であり、RSV とhMPVのシーズンはかなり重複していた。

COVID-19パンデミックの影響(2020年7月~2021年6月)

 COVID-19パンデミックの初期である2020年から2021年のシーズンにかけては、hMPVとRSVの両方の流行は大幅に減少した。

パンデミック中およびパンデミック後の流行パターン(2021年7月~2024年6月)

 パンデミック中(2021—22年、2022—23年)およびパンデミック後(2023—24年)のシーズンでは、hMPVとRSVの流行パターンにいくつかの変化がみられた。

 hMPVは、2021—22年シーズンは異例に長く(35週間)、地域によってピークの時期が異なった。2022—23年と2023—24年のシーズンでは、hMPVの季節性はパンデミック以前のパターンに比較的戻り、ピークはそれぞれ3月と4月であった。

 RSV はパンデミック中の2シーズン(2021—22年、2022—23年)とパンデミック後の1シーズン(2023—24年)では、パンデミック以前の4月と比較して、早期にシーズンが終息する傾向があった。具体的には、2021—22年と2022—23年は1月、2023—24年は3月に終息した。2021—22年と2022—23年のRSV のシーズン開始は、5月下旬と6月中旬に遅れた。ピークの時期も、2021—22年は7月下旬、2022—23年は11月上旬と大きく異なった。2023—24年のRSV のシーズン開始は10月と遅かったものの、ピークは11月であり、2022—23年のシーズンと同様であった。

同時流行の変化

 COVID-19パンデミック中およびパンデミック後には、RSVとhMPVの同時流行のパターンに顕著な変化がみられた。パンデミック以前はRSVとhMPVのシーズンが重複する期間(中央値)は13.5週間であったが、パンデミック中およびパンデミック後では、3週間に減少した。2022—23年と2023—24年のシーズンでは、ほとんどの地域でRSVとhMPVの同時流行期間は5週間未満であった。

結論

 2014年から2024年の間に、米国におけるhMPVとRSVの流行パターンは、COVID-19パンデミックによって大きな影響を受けた。パンデミック期間中とその後の数シーズンでは、RSVの流行時期の早期化と両ウイルスの同時流行期間の短縮が観察された。しかし、RSVの季節性が再びパンデミック以前のパターンに戻りつつある兆候もみられており、今後のシーズンではhMPVとの同時流行が増加する可能性がある。

インフェクションコントロール34巻7号表紙

(本誌のご購入はこちらから)

*INFECTION CONTROL34巻7月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。