2021(令和2)年度から「産後ケア事業」の実施が市区町村の努力義務となり、急激に産後ケア事業が展開されています。2023(令和5)年度こども家庭庁「子ども・子育て支援推進調査研究事業」の「産後ケア事業の体制整備に関する調査研究事業」によると、ケアの内容や質、安全性の確保に向けた対策状況に差があり、経営実態にも課題があることが報告されました。また、周産期におけるメンタルヘルスの課題は大きく、このような課題に取り組むべく、国は産後ケア事業や妊産婦のメンタルヘルスに関する事業への2025(令和7)年度予算を拡充しています。一方、民間の企業や団体による産後ケアも展開され、さまざまな形で運営されており、ケアの質の担保やハイリスク妊産婦への支援や連携などについても、さらなる整備が必要です。
このような社会の変化に伴い、本増刊号では、産後ケアの基礎知識から、実際の運営までを網羅して企画しました。各事業者の運用・改善や、これから新たに開設を目指す方に運営・実践の参考としていただけるよう、産後ケア提供施設でのサービスの詳細、新たな実践やメンタルヘルス支援への取り組みなどを紹介しています。また、産後ケア事業の対象が産後4か月から1年となったことに応じ、助産師にとって知識が手薄である乳児の発育・発達合わせたアセスメントと支援、安全に関する項目も盛り込みました。
母親とその家族が安心して自宅での育児のスタートを切れるよう、生まれた子どもが健やかに育つことができるよう、これからの日本の社会において産後ケアが担う役割は大きいと考えます。必要な人に適切に支援が届くよう、本書が産後ケアに携わる皆さまの一助になれば幸いです。
編著
公益社団法人日本助産師会
永森久美子
本記事は『ペリネイタルケア』2025年夏季増刊 序文からの再掲載です。
