MENU
新規会員登録・ログイン
トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing パイオニア精神を受け継ぎ、超えていきたい|豊島勝昭|新生児医療の あ!のひと|#009

パイオニア精神を受け継ぎ、超えていきたい

 研修医だった30年前、忙しさもある NICU で未来を語り合うパイオニア精神に溢れる先輩たちに憧れ、新生児科医になりました。新生児科研修のころ、超低出生体重児が脳室内出血を起こすたびに自責の念に苦しみました。脳室内出血を予防する循環管理のヒントを探して、小児循環器医の研修や動脈管の基礎研究に取り組みました。後負荷不整合やStress-Velocity関係を学び、NICU循環管理に導入したくて新生児科医に戻りました。それから25年間、合併症予防を目指して心エコー検査に基づくNICU循環管理を模索し続けてきました。自分が出会った恩師たちの「現状維持は退化」「新しいことは何でも最初は非常識。投げ出さず続けることが大切」という言葉が道標でした。最近は、後輩世代と一緒にAIを活用した3D心エコーなどの新しい技術に取り組んでいます。

 NICUで働き続けることに大変さはありました。しかし、新生児医療を通じて出会えた全国各地のNICU仲間は、皆、素敵でした。それぞれの場所で頑張りつつ、協力し合える日本の新生児医療チームに加われたことに後悔はありません。

 そして、今は出会い以上に、さまざまな別れが増えていく年齢になりました。それぞれとのご縁に感謝し、懐かしむことで終わらず、出会えた人たちと目指してきた願いを少しでも未来に届けることが恩返しだと思えています。「いつかやろう」と先延ばしにしてきたことに、一つひとつ向き合っています。新生児科医が保育器のそばで細やかな診療を続けてきて、忙しくても協力し合える仲間が多い日本だからこそ、みんなで気付き、見つけてきたことがある......それを医学論文などで未来にしっかり伝えたいです。

 どんな時代になろうとも、生まれてくる子どもたちは希望であり、新生児医療は社会の希望になれると信じています。「NICUがあってよかった」と、いつか子どもたちやご家族に思ってもらえる新生児医療を、後輩世代の皆さまに混じって探し続けたいと思えてます。

神奈川県立こども医療センター新生児科部長、
周産期医療センター長、臨床研究所副所長
豊島勝昭

     ●     

(家族の許可を得て掲載)

す!がおのひとこと

 研究や論文執筆は趣味と思うようにしました。業務を日々続けていると思うと、つらく感じることがあります。新しいことに挑戦したり、変化に向けて自ら取り組んだりすることで、気持ちが楽になります。趣味の方が真剣にこだわれます。さまざまな仲間が増え、翻訳や統計ソフト、ChatGPTのようなAIも活用できる今だからこそ、できることがたくさんある気がして、研究仲間に思える後輩世代と一緒に、 研究を部活動のように苦楽を共にしています。


本記事は『with NEO』2025年3号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。