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トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing DNAの2分の1から|岡 園代|Roots|#016

札幌市立大学 看護学部・助産学専攻科 講師

岡 園代


 「いいかい。人の口は嘘を言います。大丈夫ではないのに大丈夫と言います。だから、人の言葉の後ろをよく考えて、相手をよく見て、相手の本当はどこにあるのかをしっかりと考え、真意を掴みなさい」。助産学専攻科に入学したとき、昭和30年代に働き盛りだった先輩助産師である母から届いた手紙の最初に書いてあった言葉です。人あたりはよいけど、少し神経質な母が、私にそんなことを伝えてきたのが意外で、強く記憶に残っています。助産師はよい仕事だと言われて育ってきた私は、まんまと彼女の術中にはまったのでした。

 助産師になって35年、新生児医療に夢中になり、新生児集中ケア認定看護師になってからは20年が経とうとしています。新生児看護は、対象者との言語による意思疎通の難しさよりも、五感で彼らと対話する楽しさが勝り、夢中になりました。本当によい仲間たちに巡り合い、理解ある周囲の人々にたくさん助けていただきました。臨床と実践活動、大学での認定看護師教育課程の立ち上げや専任教員を経て、今の教育活動につながっています。人の思考にある潜在的な事柄を言語化することに関心を持つようになったのは、それが熟練した技を持つ者にとって必須な力であるというだけではなく、母の手紙にも影響されたからかもしれないと、自分の持ち時間が少なくなってきた今、思うところです。

 教育に携わるようになってからは、中堅看護師・助産師や若人たち(死語のようですが、あえて…)の困難に立ち向かう心のしなやかさに感動したり、驚愕したりとあっという間に歳をとりました。しかし、彼女たちのエネルギーのおこぼれをたくさんもらって、長年のミッションである「気持ち悪くならない程度の若返り大作戦」は成功しそうです(笑)

 「人の口」つながりで美味しいものには目がなく、いつも“口福”を追求しています(こちらも母の術中)。一方で、人の口から発せられる言葉も“幸せをもたらすもの”です。聞こえがよい言葉ばかりを発するわけにはいきませんが、真摯に伝え合うことで、人としての富を増やすことができるはずなので、もう少し言葉選びにもこだわってみようと思います。



本記事は『ペリネイタルケア』2025年5月号の連載Rootsからの再掲載です。

➡︎連載「姿勢と呼吸をととのえるガスケアプローチ」の動画はこちらから


*** 今月号からスタートの新連載!! ***

日本母体胎児医学会 MEME プロジェクト
助産師のための超音波レッスン

今や助産師外来でも欠かせないツールである超音波検査。
「興味はあるけど難しそう……」という方に向け
産科医の若手メンバーが交代で解説していきます。

<第1回>超音波って、いったい何? いま何が見えているの?

ペリネイタルケア読者の皆さん! こんにちは。
私たちは、日本母体胎児医学会の若手メンバーです。このたび、「MedicalとEngineerが創るMirai(未来)へのEducation(教育)プロジェクト」として、MEMEプロジェクトを立ち上げました! 日本全国で母児を守っている産科医・助産師の皆さんと一緒に、周産期領域に関する教育を広めていくために活動しています。本連載を通じて、皆さんに知識を提供するだけでなく、「理解できている」という安心感を持っていただくとともに、同じ職場の方々と学びを共有することで、学びの輪がさらに広がることを期待しています。

★ペリネイタルケア読者限定で、母体胎児医学会のホームページにある動画コンテンツを無料で視聴することができます。