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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール ■必読■「ICTメンバーのためのChatGPT入門」を公開しました

コネクト合同会社の山口征啓先生に「ICTメンバーのためのChatGPT入門」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

(本誌のご購入はこちらから)


「ICTメンバーのためのChatGPT入門」

はじめに

 皆さん、こんにちは。コネクト合同会社の山口征啓です。筆者は「医療従事者の働く価値を上げる」というミッションを掲げて2019年に起業しました。ICTの活動ではいろいろなデータの集計や会議資料の作成など時間のかかる事務作業がかなりありますよね。本稿は、今話題のChatGPTを使って、作業を効率化しようというお話です。

どのように使うの?

 ChatGPTは大規模言語モデルと呼ばれるAIであり、LINEと同じようなChat形式で文章を作成するのが得意です。また、とても礼儀正しくて、使っている人の気分を害さないように会話するように訓練されています。

 ChatGPTは主にパソコンのブラウザからアクセスして使います。無料で使用することができますが、登録が必要です。週刊アスキーのウェブサイト(https://ascii.jp/elem/000/004/134/4134156/#eid3527421)[1]の記事を参考に登録してみてください。登録できたら、まずは話しかけてみましょう(図1)。次に、ICTのメンバーの業務をどのように手伝えるのかをChatGPTに聞いてみました(図2)。情報の提供や教育資料の作成、プロトコルの立案、リスク評価、質問への回答などをあげてくれました。次にMRSAの感染対策について聞いてみると、8つのポイントをあげてくれました(図3)。続いて、「2の個人保護具の使用についてもう少し詳しく教えてください」と聞いてみると、ガウンと手袋の使い方について解説してくれます。

図1 ChatGPTの会話画面

図2 ChatGPTへの質問例①(ICT業務)

図3 ChatGPTへの質問例②の一部(MRSAの感染対策)


どのようなことに使えるの?

 まずは、ChatGPT 3.5(無料版)について説明します。

①文章作成

 院内向けや患者向けの文章、会議の資料などを作ってもらうことができます。最初から完璧な文章ができ上がるわけではないので、適宜修正を加えます。しかし、自分で一から文章を書くのに比べると、早く、簡単にでき上がります。また、子ども向けの説明文を作るのも得意です。ぜひ「6歳の子どもにも分かるように書いてください」と頼んでみてください。

 メールの本文や返信を書いてもらうのも便利です。なかなか書きにくい内容や返信しにくい文章を書いてもらうのがよいです。自分にとって大変な仕事ほど、手伝ってもらえるとありがたいですね。ただし、個人情報や機密情報は入力しないように気を付けましょう。

②情報検索

 普段調べたいことがあれば、ウェブサイトで検索していると思います。たとえば、Googleで検索すると、関連のありそうなウェブサイトを提案してくれますが、その後は手動で一つずつ見て回らないといけません。ChatGPTは質問に対する答えを文章で返してくれます。これはとても便利です。しかも非常に分かりやすく説明してくれます。回答で分からないところがあれば、さらに質問をすると詳しく答えてくれます。ただし、回答が100%正しいわけではないので、信憑度については自分で確かめる必要があります。すでに確立された情報については高い確度で答えてくれます。

③教育

 ChatGPTは知識が豊富で、言葉遣いが丁寧なので、教師としても素晴らしい能力を発揮します。筆者は英文で分からないところをよく尋ねますが、とても分かりやすく答えてくれます。ICTメンバーの教育にも一役買ってくれそうです。また、テストも作ってくれます。研修やE-learning の後の目標到達確認用に最適です。ChatGPTは最新の内容は少し苦手ですが、オーソドックスな内容であれば、素晴らしい教師として振る舞ってくれます。

④カウンセリング、コーチング

 ChatGPTは会話が得意なので、カウンセリングやコーチングなど、会話を通じたサービスは得意です。「ちょっと愚痴を聞いてもらえますか?」と個人的な悩みや愚痴などを話しかけてみてください。あなたの気が済むまでずっと会話を続けてくれます。ただし、ChatGPTはすぐにいろいろと解決策を提案するクセがありますから、「提案せずに、傾聴してください」と頼むと聞き役になってくれます。

使いこなすコツは?

① 最初に役割を設定する

 ChatGPTは、普通に質問をすると万人向けの当たり障りのない回答をします。専門家であれば、ちょっと物足りない答えになるでしょう。しかし「あなたは優秀な認定看護師です」という風に役割を設定すると、ノリノリでなりきって答えてくれます。課金をすると「Custom Instructions」という、設定が使えるようになり、毎回入力しなくてもより適切に答えてくれるようになります。

②会話で少しずつ修正する

 最初の質問では満足のいく結果が得られなくても、会話のなかで修正していくことで完成度を上げることができます。「ここをこのように修正してください」や「ここは間違っていませんか?」などと指摘することで、ChatGPTは回答を修正します。これを繰り返していくと、効率のよい問いかけ方がだんだん分かってくると思います。

③課金する

 ここまでは皆さんが無料で使えるChatGPT3.5を使う方法を中心に解説しましたが、実際に業務に使うのであれば、課金して使用するのがお勧めです。月$20(3,000円弱)と安くはありませんが、回答は飛躍的によくなります。ChatGPT3.5で時間をかけて修正していた内容が、すっと出てくるようになる感じです。筆者も課金していますが、使っていくうちに月3,000円は安いなと感じるようになりました。まるで自分専用のアシスタントを雇っているようです。

 また、課金をするとさまざまな追加機能が使えるようになります。たとえば、「プラグイン」という機能拡張ツールや、「Code Interpreter」という計算やプログラミングができるツールがあります。プラグインは、ChatGPTに新たな機能を追加できるツールで、ウェブサイトの情報を検索する「WebPilot」やさまざまな検索エンジン( 食べログ、楽天、PubMed など)から情報をとってくるプラグインなど、各社がChatGPT向けに開発しています。現在(2023年8月)は800以上のプラグインがあり、無料で使用することができます。Code Interpreter は自分のファイルをアップロードして、分析したり、レポートを作成したりすることができます。ChatGPTは計算や論理的な思考が苦手なのですが、Code Interpreterではプログラミングを使って解決してくれます。

注意点

 ChatGPT に入力した内容は今後のChatGPTの改善のために使用されます。個人情報はもちろんのこと、病院の機密情報なども入力するのは避けましょう。2023年8月29日にOPEN AI社から法人向けのプランも公表されました。こちらを病院で契約できるとより安心でしょう。ちなみに、課金をすると学習のためには使用されなくなります。

 また、ChatGPTが生成した文章が正しいかどうかはChatGPTに聞いても分かりません。情報の信憑性には自分が責任をもちましょう。自分が読んで間違いないと思う文章のみを採用することが重要です。情報が正しいかどうか分からない場合は書籍や文献で確認をしましょう。

おわりに

 本稿では、ChatGPTをまったく使ったことのない方が利用するためのヒントをお伝えしました。ChatGPTを使いこなすコツはいろいろと触ってみるのが一番です。まずは無料で登録して話しかけてみましょう。きっと予想外の答えが返ってくると思います。ChatGPTを使いこなしている人は、この予想外の答えに「おお!」と感じた人たちばかりです。みなさんもぜひChatGPTとの会話を楽しんでください!

引用・参考文献

1) ASCII×AI.【初心者向け】ChatGPT の始め方.https://ascii.jp/elem/000/004/134/4134156/#eid3527421 


*INFECTION CONTROL32巻12月号の掲載予定の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。