矢野邦夫先生に「50歳以上の成人に対する肺炎球菌結合型ワクチン」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。
*INFECTION CONTROL34巻4月号の掲載の先行公開記事となります。
「50歳以上の成人に対する肺炎球菌結合型ワクチン」
予防接種実施諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices, ACIP)が、50歳以上の成人に対する肺炎球菌結合型ワクチンの使用に関する推奨事項を拡大したので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/74/wr/pdfs/mm7401a1-H.pdf]。
肺炎球菌ワクチンの種類
現在(2025年1月)、米国では、成人向けの肺炎球菌ワクチンとして、15価肺炎球菌結合型ワクチン(15-valent pneumococcal conjugate vaccine, PCV15)、20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)、21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)、23価肺炎球菌多糖体ワクチン(23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine, PPSV23)の4種類が推奨されている。これらのワクチンは、含有する血清型が異なる。
肺炎球菌ワクチンの推奨年齢
2024年10月以前は、ACIPは「肺炎球菌性疾患のリスク因子をもつ19~64歳の成人」および「65歳以上のすべての成人」にPCV の単回接種を推奨していた。2024年10月23日、ACIPは、PCV未接種の50歳以上の全成人にPCVの単回接種を推奨することを決定した。これは、以前の65歳以上への推奨から年齢制限を引き下げたものである。この決定は、50~64歳の成人の肺炎球菌感染症による罹患率と致死率を減らす可能性(特に疾病率の高い人口集団における効果)が期待されることに基づいている。
19~49歳の成人に対するリスクベースのPCV接種推奨事項、およびPCV13を接種済みの成人に対する推奨事項(PCV13を接種してから1年以上経過している成人に対して、PCV20またはPCV21のいずれかを1回接種することを推奨している)に変更はない。ほとんどの成人は、生涯に一度だけPCVを接種すれば十分であるが、特定の基礎疾患がある人や、過去にPCV13を接種した人は、追加の接種が必要になる場合がある。
背景
肺炎球菌は、呼吸器感染症、菌血症、髄膜炎の一般的な原因菌である。小児におけるPCVの広範な使用は、小児への直接的な効果と、PCV未接種の年長児および成人への間接的な効果(すなわち、小児からの肺炎球菌の伝播が減少することにより、集団における疾病発生率が低下した)の両方を通じて、肺炎球菌感染症の発生率を減少させた。しかし、肺炎球菌感染症のリスクを高める基礎疾患またはリスク因子をもつ人や高齢者は、肺炎球菌感染症の発生率が高い。この推奨事項は、50~64歳の成人のワクチン接種率を向上させ、肺炎球菌感染症の発症率と致死率を低下させる可能性があることを示すエビデンスに基づいている。
肺炎球菌ワクチンの血清型
PCV15には15種類の血清型、PCV20には20種類、PCV21には21種類の血清型が含まれている。PPSV23には23種類の血清型が含まれているが、結合型ワクチンではない。
PCV21は、米国の大部分の地域でほかの推奨されるPCVよりも多くの肺炎球菌株をカバーすると予想される。しかし、PCV21には血清型4は含まれていないため、血清型4による肺炎球菌感染症の割合が高い特定の集団では、血清型4を含むワクチン(PCV20単独またはPCV15とPPSV23の連続接種)が、より広範な血清型カバー率を提供する可能性がある。
米国西部の一部の成人集団では、血清型4による侵襲性肺炎球菌感染症の割合が高くなっている。これらの地域では、PCV20単独またはPCV15とPPSV23の両方が、PCV21よりも広範な血清型カバー率を提供すると予想される。

(本誌のご購入はこちらから)
*INFECTION CONTROL34巻4月号の掲載の先行公開記事となります。
*本記事の無断引用・転載を禁じます。