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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイク」

矢野邦夫先生に「侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイク」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL34巻2月号の掲載の先行公開記事となります。

「侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイク」

 米国バージニア州で侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイクが発生し、36人が罹患し、7人(19.4%)が死亡した。その詳細が週報(MMWR)で報告されているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/wr/pdfs/mm7343a3-H.pdf]。

侵襲性髄膜炎菌感染症

 襲性髄膜炎菌感染症は、髄膜炎菌によって引き起こされる重篤な疾患で、主に髄膜炎または髄膜炎菌血症を呈する。リスクのある集団(大学生やホームレスなど)を特定できる場合、侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイクを制御するための好ましい手段はワクチン接種である。アウトブレイクでは、共通の所属、地理的コミュニティ、共通の特徴に基づいて、リスクが高いとみなされる特定の集団にワクチンを接種することが推奨される。

アウトブレイク

 2022年8月12日、バージニア州保健局はバージニア州東部で2人の侵襲性髄膜炎菌感染症の症例が入院していることを知った。2人の血液検体から髄膜炎菌が確認された。2022年6月から7月にかけて、東部地域でさらに2人の侵襲性髄膜炎菌感染症の症例が報告された(対照:過去10年間、東部地域では侵襲性髄膜炎菌感染症の発生は年間平均1人のみであり、バージニア州全体では年間平均8人であった)。4人に共通の曝露、疫学的関連性、特定のリスク要因は特定されなかった。

 2022年8月、バージニア州保健局はアウトブレイクの調査を開始した。確定例は「2022年6月1日以降に侵襲性髄膜炎菌感染症の症状(発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、羞明、項部硬直)を呈した人において、通常は無菌の身体部位から採取した検体で、培養またはポリメラーゼ連鎖反応により髄膜炎菌が特定された人」と定義された。疑い例は「疫学的関連性により特定され、髄膜炎菌は検出されなかったが、その他の確定例の定義基準をすべて満たした人」と定義された。

調査結果

 2022年6月12日から2024年3月1日までに、合計36人の確定例と1人の疑い例が確認された。疑い例は、確定例の症例を直接ケアしてから5日後に発症したワクチン未接種の医療従事者であった。この医療従事者は検体採取前に曝露後予防を受けており、検体はポリメラーゼ連鎖反応検査と培養で髄膜炎菌陰性であった。

 確定例の大多数(58%)は主に都市部に住んでいた。確定例36人のうち28人(78%)は非ヒスパニック系黒人またはアフリカ系アメリカ人(黒人)で、21人(58%)は男性であった。年齢の中央値は47歳(範囲=16~82歳)であり、その大半(64%)は30~60歳であった。すべての症例は入院を必要とし、7人が侵襲性髄膜炎菌感染症の合併症で死亡した(症例致死率=19.4%)。死亡例の年齢中央値は41歳(範囲=33~56歳)であった。3人(43%)は1つ以上の基礎疾患を抱えた症例であった。髄膜炎菌血症(ほかの臨床症候群を伴わない)が24人で確認され、その臨床症状は、発熱、吐き気、嘔吐、下痢、筋肉痛などであった。5人はHIVに感染しており、そのうちの1人はHIV治療を受けていた。1人は臓器移植後に免疫抑制剤を投与されていた。10人は糖尿病であった。また、35人は過去に髄膜炎菌ワクチンを接種したエビデンスがなかった。そのうち4人はHIV感染の診断を受けており、ワクチン接種が定期的に推奨されていた。1人は発症の16年前に髄膜炎菌多糖体ワクチンを1回接種していた。

濃厚接触者への対応

 濃厚接触者は「確定例の発症後10日以内に、確定例と長時間接触したか、確定例の口腔分泌物に曝露した人」と定義された。すべての濃厚接触者に対して、抗菌薬(リファンピシン、シプロフロキサシン、セフトリアキソンなど)の短期投与からなる曝露後予防を適時に実施する必要性が強調された。医療ケアの接触で1人の疑い例が特定されたが、濃厚接触者において、追加の症例は発生しなかった。「侵襲性髄膜炎菌感染症のリスク要因」と「特定された症例と類似した年齢層」に基づいて、濃厚接触者の一部に髄膜炎菌結合型ワクチンの接種が推奨された。

インフェクションコントロール34巻2号表紙

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*INFECTION CONTROL34巻2月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。