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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール ■必読■「COVID-19のパンデミックと小児の頭蓋内感染症」を公開しました

浜松市感染症対策調整監 兼 浜松医療センター 感染症管理特別顧問の矢野邦夫先生に「COVID-19のパンデミックと小児の頭蓋内感染症」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。


「COVID-19のパンデミックと小児の頭蓋内感染症」

 COVID-19のパンデミックの発生後に小児の頭蓋内感染症が増加していることについて、CDCが週報(MMWR)で報告しているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/pdfs/mm7222a5-H.pdf]。

調査

 2022年5月、CDCは2021年中に小児の頭蓋内感染症(特に連鎖球菌によって引き起こされる感染症)が増加した可能性について調査を開始した。小児における頭蓋内感染症の全国的な傾向の特徴を知るために、19の州とコロンビア特別区の37の三次紹介小児病院から小児病院協会の小児医療情報システムに報告された。脳膿瘍、硬膜外膿瘍、硬膜下膿瘍による小児の入院患者を分析した。対象となった病院は、2016年1月1日~2023年3月31日まで一貫して、小児医療情報システムに報告していた。研究期間中に一次または二次退院診断(「頭蓋内膿瘍および肉芽腫」または「硬膜外膿瘍および硬膜下膿瘍」)された18歳以下の入院患者すべてが含まれた。

結果

 2016~19年に収集された小児頭蓋内感染症の入院データより、毎月の症例数の中央値(34件)と最大値(61件)がパンデミック前のベースラインとされた。2020年3月にCOVID-19のパンデミックが発生した後、2020年5月~2021年5月にかけて、月次の頭蓋内感染症の症例数は中央値のベースラインを下回った。2021年8月~2023年3月にかけて月次の症例数は中央値のベースラインを上回ったが、最大値のベースラインを超えることはなかった。しかし、2022年12月に大きなピーク(102件)がみられた。2023年1~3月にかけて、感染者数は減少し始めたが、最大値のベースラインを上回ったままとなった。米国国勢調査局の地域間で多少のばらつきは観察されたが、全体的なパターンはおおむね同様であった。また、患者の人口統計的特徴(年齢、人種、民族、性別)、重症度レベル(入院期間、集中治療室への入院、院内死亡率)、複雑な慢性疾患を有する患者の割合は、研究期間を通じて変動はなく、これまでに報告された割合と同様であった。

考察

 多様な地域の大規模な小児病院ネットワークからの2016年1月~2022年5月までのデータによって、COVID-19のパンデミックの発生後に小児の頭蓋内感染症のパターンが変化したことが示された。今回の最新情報では、19の州とコロンビア特別区の37の三次紹介小児病院からの2023年3月までの延長入院のデータにより、小児頭蓋内感染症の数が2021年8月から予想を上回り、2022~23年の冬に大きなピークを迎えたことが分かった。小児の頭蓋内感染症では、ウイルス性呼吸器感染症や副鼻腔炎が先行することが多く、2022~23年の冬のピークはほかの呼吸器系ウイルスの流行と一致した。ただし、これらの増加が観察されたにもかかわらず、小児の頭蓋内感染症は依然としてまれであった。CDCは小児の頭蓋内感染症の傾向を追跡し続けており、18歳以下のすべての人に対して、インフルエンザやCOVID-19を含むワクチンの接種を継続することを推奨している。


*INFECTION CONTROL32巻10月号の掲載予定の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。