矢野邦夫先生に「先天性サイトメガロウイルスに対する普遍的な新生児スクリーニング」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。
*INFECTION CONTROL33巻12月号の掲載の先行公開記事となります。
「先天性サイトメガロウイルスに対する普遍的な新生児スクリーニング」
先天性サイトメガロウイルス(congenital cytomegalovirus, cCMV)は、小児における出生異常の最も一般的な感染性原因であり、永久的な難聴の最も多い非遺伝性原因である。cCMV感染を早期に特定することで、適応があれば抗ウイルス療法を実施し、聴覚検査や発達検査を行えば、転帰を改善できる可能性がある。2023年2月、ミネソタ州は米国の州として初めて、cCMVの普遍的な新生児スクリーニングを実施した。その結果が報告されているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/wr/pdfs/mm7332a2-H.pdf]。
普遍的な新生児スクリーニング
両親が拒否しない限り、ミネソタ州で生まれたすべての乳児は、ミネソタ州保健局で乾燥血液スポットに対して行われる定性リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイを使用して、CMVについてスクリーニングされる。CMVが検出された乳児は、生後21日以内に尿の診断PCR検査を受けることが推奨される。cCMVが診断された乳児に対して推奨される評価には、全血球計算、肝機能検査、神経画像検査、聴覚および眼科的評価が含まれる。さらに、生後90日以内にCMV感染のエビデンスがある乳児は、臨床医または電子検査報告を通じてミネソタ州保健局に自主的に報告される。
スクリーニングの結果
2023年2月6日から2024年2月5日の間に、ミネソタ州保健局は60,115人の乳児をスクリーニングし、そのうち184人(0.31%)からCMVが検出された。174人(0.29%) は生後21日以内に検出され、10人(0.02%)は生後21日以降に検出された。生後21日以内にCMVが検出された174人の乳児のうち、170人(98%)の確認検査が完了した。これらの乳児のうち169人(99%)でCMVが検出された。さらに、CMVの新生児スクリーニングが陰性であった乳児3人が、臨床医または検査室の報告によってcCMVが特定された。
187人の乳児のうち、176人(94%)が症例定義(cCMV感染は確認検査が陽性であり、cCMV疾患は確認検査が陽性かつ臨床基準[肝腫大や視力障害など]を満たす)を満たした(cCMV 感染155人[88%]、cCMV 疾患21人[12%])。11人(6%)の乳児は症例定義を満たしていなかった。
cCMV感染またはcCMV疾患が確認された176人のうち、神経画像検査、聴覚検査、眼科検査がそれぞれ160人(91%)、157人(89%)、141人(80%)に対して実施され、132人(75%)が3つの検査すべてを完了した。59人(34%)の乳児で1つ以上の臨床所見が確認され、最も多かったのは非特異的な神経画像異常であった(ただし、すべての所見が症状のある疾患につながったわけではない)。新生児スクリーニングで特定された7人の乳児で、通常の新生児臨床ケアでは検出されなかったcCMVと一致する所見がみられ、そのうち2人はcCMVと一致する神経画像異常があった。
全体として、29人(16%)の乳児が新生児聴覚スクリーニングで不合格の結果を受けた。永久的な聴覚障害のある11人(6.3%)の乳児のうち、4人が新生児聴覚スクリーニングで合格結果を受けていた。15人(8.5%)の乳児が抗ウイルス療法を受けた。2人の乳児が死亡し、両方ともcCMV以外の死因であった。ミネソタ州で観察されたcCMVの有病率は、新生児の0.29%であった。
普遍的な新生児スクリーニングにより、日常的なケアや対象を絞ったスクリーニングでは見逃されていた可能性のある神経学的異常のある乳児や、cCMV関連の永久的な難聴やその他の後遺症のある乳児、またはそのリスクがある乳児が特定された。
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*INFECTION CONTROL33巻12月号の掲載の先行公開記事となります。
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