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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「高病原性鳥インフルエンザ (H5N1)ウイルスに曝露した人々への対応」

矢野邦夫先生に「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスに曝露した人々への対応」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL33巻11月号の掲載の先行公開記事となります。

「高病原性鳥インフルエンザ (H5N1)ウイルスに曝露した人々への対応」

  米国において、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)A(H5N1)ウイルスが野鳥や哺乳類、家禽、商業用酪農施設で検出されている。このウイルスに曝露した人々へのリスクは低いが、症状の継続的な監視と検査が重要である。ミシガン州はHPAI A(H5N1)ウイルスが確認された酪農場および養鶏施設の数が最も多い州であり、そこで働く人々が曝露している。HPAI A(H5N1)ウイルスに曝露した人々の健康監視、検査、症例特定について、CDCが週報に報告しているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/wr/pdfs/mm7329a4-H.pdf]。

感染牛

 テキサス州の感染牛がミシガン州の酪農場にHPAI A(H5N1)ウイルスを持ち込んだ。その結果、ミシガン州10郡にある23ヵ所の酪農場、4郡にある7ヵ所の養鶏施設でHPAI A(H5N1)ウイルスが特定された。ミシガン州では、裏庭の鶏の群れ、ハト、キツネ、猫、オポッサム、アライグマからもHPAI A(H5N1)ウイルスが検出されている。全ゲノム配列解析の結果は、すべての分離株はテキサス州に由来していることを示している。

酪農場の労働者の監視

 HPAI A(H5N1)ウイルスが確認された酪農場23ヵ所において、感染牛に曝露した306人が特定された。これらの酪農場のうち12ヵ所(60%)の労働者は、テキストベースの毎日の症状モニタリングに登録され、8ヵ所(40%)の農場の労働者は、農場の連絡担当者を通じてモニタリングされた。

 曝露した労働者のうち20人(6.5%)が症状を訴え、インフルエンザA(H5)ウイルスの検査を受けた。リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応検査を受けた人のうち、一人が結膜スワブで陽性となった。この患者は、軽度の片側結膜炎の発症前に感染牛の生乳の未殺菌乳が直接眼に曝露したと報告した。別の酪農場の労働者は、感染牛と濃厚接触した後に呼吸器症状を呈し、鼻咽頭スワブでA(H5)ウイルス検査が陽性となった。どちらの労働者も重症ではなく、入院も必要なく、家庭内または職場での接触者で病気の報告はなかった。2人とも個人防護具を着用していたが、マスクやN95レスピレータは着用していなかった。

養鶏施設の労働者の監視

 HPAI A(H5N1)ウイルスが確認された商業養鶏施設7ヵ所において、感染鶏に曝露した857人が特定された。4ヵ所の施設の労働者は、テキストベースの毎日の症状モニタリングに登録され、3ヵ所の施設の労働者は、農場の連絡担当者を通じてモニタリングされた。症状のある18人(2.1%)が特定され、検査を受けたが、すべてA(H5)ウイルスが陰性であった。

その他の曝露者のモニタリング

 感染農場に対応した連邦および州の職員も症状の有無が観察されたほか、HPAI A(H5N1)ウイルスに感染した動物(家畜または野生)や人間に接触した人々も観察された。全体で125人が監視され、15人(12%)が症状を報告し、そのうち14人はA(H5)ウイルスの検査結果が陰性だった。

結論と行動

 HPAI A(H5N1)ウイルスへの曝露があった後に症状の監視を受けたミシガン州住民1,288人のうち、53人(4.1%)が症状を報告し、そのうち52人がインフルエンザA(H5)の検査を受けた。そして、酪農従事者2人が陽性となった(検査を受けた全対象者の3.8%、監視対象の酪農従事者全体の1%未満)。

 HPAI A(H5N1)ウイルスの一般人へのリスクは低いが、A(H5N1)ウイルスのようなインフルエンザAウイルスはパンデミックを引き起こす可能性がある。したがって、感染した動物に曝露した人への通知、指導と個人防護具へのアクセスの提供、症状の監視、症状のある接触者から採取した検体の検査、症状のある人へのできる限り早い抗ウイルス薬の投与が重要である。

インフェクションコントロール33巻11号表紙

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*INFECTION CONTROL33巻11月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。