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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「細菌性性感染症予防のためのドキシサイクリン曝露後予防」

矢野邦夫先生に「細菌性性感染症予防のためのドキシサイクリン曝露後予防」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL33巻10月号の掲載の先行公開記事となります。

「細菌性性感染症予防のためのドキシサイクリン曝露後予防」

 CDCが「細菌性性感染症予防のためのドキシサイクリン曝露後予防の使用に関する臨床ガイドライン」を公開しているので、そのポイントを抜粋して紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/rr/pdfs/rr7302a1-H.pdf]。

細菌性性感染症の予防

 細菌性性感染症(sexually transmitted infection, STI)(具体的には梅毒、クラミジア、淋病)を予防するためのワクチンはなく、化学予防の選択肢もほとんどない。これらの感染症は米国で増加しており、ゲイ、バイセクシャル、男性と性交するその他の男性(men who have sex with men, MSM)、トランスジェンダー女性(transgender women, TGW)に不釣り合いなほど多く発生している。3件の大規模なランダム化比較試験では、性交後72時間以内にドキシサイクリン200 mgを服用すると、梅毒とクラミジアの感染症が>70%、淋菌感染症が約50%減少することが示されている。そのため、ドキシサイクリン曝露後予防(doxycycline postexposure prophylaxis, Doxy PEP)が提案された。ドキシサイクリンは、マラリアやライム病などの感染症を予防するためのPrEP(pre-exposure prophylaxis、曝露前予防)、またはPEPとして使用されているが、最近までSTI の予防には使用されていなかった。

ドキシサイクリン

 ドキシサイクリンは広域スペクトルのテトラサイクリン系抗菌薬で、吸収性および忍容性が高く、半減期は約12時間である。ドキシサイクリンの最も多い副作用には、光線過敏症、食道びらんおよび潰瘍などの胃腸症状がある。ほとんどの副作用は、投薬を中止すると解消する。ドキシサイクリンはクラミジアの治療に推奨されており、重度のペニシリンアレルギーのある非妊娠患者またはペニシリンが入手できない場合の梅毒の代替治療薬である。抗菌薬耐性の増加により淋菌感染症の治療薬としては、現在(2024年7月)は推奨されていないが、ドキシサイクリンは米国では多くの淋菌に対して依然として有効である。

推奨

 医療提供者は、過去12ヵ月間に少なくとも1回の細菌性STI(具体的には、梅毒、クラミジア、淋病)の病歴があるすべてのゲイ、バイセクシュアル、その他のMSMおよびTGWに対して、オーラルセックス、腟性交、またはアナルセックスの72時間以内にドキシサイクリン200 mg(24時間当たり、最大用量200 mgを超えてはならない)を1回服用することの利点と有害性についてカウンセリングを行う必要があり、共同意思決定を通じてDoxy PEP を提供する必要がある。処方箋には、次回の受診までの患者の予想される性行為に基づいて十分な用量が考慮される必要がある。Doxy PEPの継続的な必要性は、3~6ヵ月ごとに評価しなければならない。

 現時点では、シスジェンダーの女性、シスジェンダーの異性愛男性、トランスジェンダーの男性、その他のクィアおよびノンバイナリーの人々に対するDoxy PEPの使用に関する推奨はできない。

結果

 Doxy PEP は、特定の集団における梅毒、クラミジア、淋病の発症を減らす効果があることが実証されており、これらの感染症のリスクが高いMSMおよびTGWのSTI 予防に取り組む新しいアプローチとなる。現在行われている研究は抗菌薬耐性発現のリスクを含め、Doxy PEPとPrEPを評価している。梅毒、クラミジア、淋病の全国的な発症率増加の状況で入手可能なエビデンスは、細菌性STIに感染するリスクが高いMSMおよびTGWに対して、このアプローチを検討することを支持している。

インフェクションコントロール33巻10号表紙

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*INFECTION CONTROL33巻10月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。