2019年末を発端としたCOVID-19のパンデミックは、医療界のみならず社会全体の構図や人々の意識を大きく変える出来事となりました。しかもいまだ終息には至っていません。“感染”に対する意識が大きく変わった方も多いのではないでしょうか。
周産期の感染症は、妊婦さん自身への問題、胎内感染の問題、感染症の伝搬経路の問題など、さまざまな視点でとらえる必要があります。しかし、インターネットを中心にさまざまな情報が飛び交い、妊婦さんの中には時に過剰なまでの予防策をとったり、過度な不安を覚えたりする方もいます。
感染症の検査結果は、抗原や抗体価をひとめ見るだけでは判断できないものが多く、また、それぞれの感染症によって対応も異なります。先天異常の原因となるもの、胎児期に治療が可能なもの、出生後の対策が必要なものなど、それぞれの疾患の特徴をとらえた対応が必要です。そして医療者側もわかりやすい説明を行うために苦慮しているのが現状でしょう。
本特集では、妊婦健診で検査項目として列挙されている一般的な感染症に加え、先天性感染症として問題となる病原体、妊娠期から産褥期にかけて感染することに対して患者さんたちがとまどいがちなものなどを取り上げ、患者・家族にとって適切で有益な情報を提供することを目的としています。「そのまま渡せる説明シート」を用いることで、妊婦さんへの理解を促進し、医療者側も説明に役立てるような企画としています。
明日からの臨床現場において、ぜひとも本特集を活用していただければ幸いです。
プランナー
東邦大学大学院医学研究科 産科婦人科学講座 教授
中田雅彦
本記事は『ペリネイタルケア』2024年9月号特集扉からの再掲載です。