社会医療法人高清会高井病院
麻酔ペインクリニック科ペインセンター
臨床心理士
川居利有
現在の勤務先はすべて医療現場で、総合病院のペインセンター(麻酔科)をメインに、その他に別の総合病院の緩和ケア病棟、クリニック2施設(小児科/内科、ペインクリニック)でそれぞれ非常勤として勤務しています。
各職場で関わる人の年齢層や援助目的はさまざまで、ペインクリニックでは10歳代から高齢者までを対象に、長引く痛みを改善させる手伝いをしています。また、緩和ケア病棟では、がんを抱える方やそのご家族の心理的ケア、クリニック(小児科/循環器内科)では、幼児から高齢者まであらゆる年齢の人と関わり、援助目的も発達相談や心身不調の改善、認知症検査など多岐にわたります。
今の条件でも十分な社会保障が受けられ、一つの現場より多くの経験や知識を吸収できることから、この働きかたを選択しました。
しかし、当時は「心理の仕事」に対する具体的なイメージができていなかったこともあり、心理職に就くことは考えておらず、将来の目標もないぽっかりした気持ちで大学生活を過ごしていました。そんなある日、防災心理学の授業で阪神淡路大震災時に消防士が大きな精神的ダメージを被ったこと、心理援助は被災者だけでなく、傷付いた消防士をも支える力があるという話題に触れ、これこそ本当に「困った人を助ける」職業だと思い、本格的に心理職を目指すことにしました。
現在の専門は慢性痛領域ですが、痛みに対する心理療法は、わが国ではここ10年ほどで発展した、特に目新しい分野の一つです。そのため参考になる本もあまりなく、その実践は試行錯誤の連続で、暗中模索する日々でした。しかし、数年来の痛みに苦しみ、これまで何施設もの医療機関を受診してきた方の症状が改善したケースを経験していくなかで、誰かの役に立っているという非常に大きな喜びを感じています。
心理職の国家資格化は、心理援助に対する認知度や期待、関心を高めるでしょう。活躍の場が増えることはもちろん、これまで医療現場で唯一の民間資格として活動してきた心理職にとって、他の専門職に仲間入りできることで、これまで以上に連携が容易になると考えています。それが実現すると、心理職だけでは対処できなかった問題に、さまざまな専門家が協働して取り組めるため、さらに多くの方に援助の手が届き、今以上にやりがいを感じられるようになるのではないかと期待しています。
近年、医療現場では痛み診療や、うつ病診療における心理療法の活用により、そのありかたが大きく発展しました。しかし、新たな取り組みでは誰も経験したことのない困難に直面することが往々にしてあります。それらを個人的にも学問的にも克服していくことで、さらに周囲から必要とされる存在になるため、日々努力し、進化し続けることはたいへん重要です。これから心理の現場で働く方には、単に知識や技術を身に付けるだけでなく、心理援助がこれまで以上に社会の役に立つよう、発展させる役割も担っていることを自負していただければよいと思います。
また、心理援助は患者さまだけでなく、他の専門職の援助や、自分の生きかたにも役に立つ技能です。自分自身がいかに “いきいき” できるか探求することも、心の専門家としては重要なことだと思います。自分の生きかたとして、この仕事を生きがいに思えることが何よりも大切なことかもしれません。
木曜日:B総合病院の緩和ケア病棟勤務
金曜日:クリニック(小児科/内科)勤務
土曜日:クリニック(ペインクリニック)勤務
麻酔ペインクリニック科ペインセンター
臨床心理士
川居利有
いまの働きかた
現在の勤務先はすべて医療現場で、総合病院のペインセンター(麻酔科)をメインに、その他に別の総合病院の緩和ケア病棟、クリニック2施設(小児科/内科、ペインクリニック)でそれぞれ非常勤として勤務しています。
各職場で関わる人の年齢層や援助目的はさまざまで、ペインクリニックでは10歳代から高齢者までを対象に、長引く痛みを改善させる手伝いをしています。また、緩和ケア病棟では、がんを抱える方やそのご家族の心理的ケア、クリニック(小児科/循環器内科)では、幼児から高齢者まであらゆる年齢の人と関わり、援助目的も発達相談や心身不調の改善、認知症検査など多岐にわたります。
今の条件でも十分な社会保障が受けられ、一つの現場より多くの経験や知識を吸収できることから、この働きかたを選択しました。
心理職をめざした理由
関西出身ということもあり、中学時代に体験した阪神淡路大震災は将来の進路選択に大きく影響しました。「困った人を助けたい」との思いから、高校卒業後は消防士を目指すことにしましたが、身体的な理由からその夢を断念。挫折感を味わったまま、何となく面白そうだからという理由で心理学部に進学しました。しかし、当時は「心理の仕事」に対する具体的なイメージができていなかったこともあり、心理職に就くことは考えておらず、将来の目標もないぽっかりした気持ちで大学生活を過ごしていました。そんなある日、防災心理学の授業で阪神淡路大震災時に消防士が大きな精神的ダメージを被ったこと、心理援助は被災者だけでなく、傷付いた消防士をも支える力があるという話題に触れ、これこそ本当に「困った人を助ける」職業だと思い、本格的に心理職を目指すことにしました。
実際になってみて
社会に出てからは、スクールカウンセラーをしながら複数の医療現場で勤務しました。最初の5年で、在宅緩和ケア、ペインクリニック、小児発達外来、不妊外来、認知症診療、うつ病診療のほか、不登校対応や、職場メンタルヘルス、遺族ケアなどの業務に関わることができました。さまざまな領域で活躍できる充実感を得る一方で、携わる問題が命に関わる場合や、一筋縄ではいかない複雑なものもあり、想像以上に重大かつ深刻で、緊張感のいる仕事だというのが率直な感想でした。現在の専門は慢性痛領域ですが、痛みに対する心理療法は、わが国ではここ10年ほどで発展した、特に目新しい分野の一つです。そのため参考になる本もあまりなく、その実践は試行錯誤の連続で、暗中模索する日々でした。しかし、数年来の痛みに苦しみ、これまで何施設もの医療機関を受診してきた方の症状が改善したケースを経験していくなかで、誰かの役に立っているという非常に大きな喜びを感じています。
これからの展望・希望
私の場合、心理援助に対するやりがいの一番大きな部分は、誰かの役に立つ感覚ですが、先にも述べた通り、そう簡単に結果が出せるものではありません。特に医療現場では、難病や不治の病、経済的困窮、社会からの孤立によって苦しむ方もたくさん目にします。それら全てを心理援助だけで解決できるはずもなく、限界があります。心理職の国家資格化は、心理援助に対する認知度や期待、関心を高めるでしょう。活躍の場が増えることはもちろん、これまで医療現場で唯一の民間資格として活動してきた心理職にとって、他の専門職に仲間入りできることで、これまで以上に連携が容易になると考えています。それが実現すると、心理職だけでは対処できなかった問題に、さまざまな専門家が協働して取り組めるため、さらに多くの方に援助の手が届き、今以上にやりがいを感じられるようになるのではないかと期待しています。
心理職に就きたいと思っている学生へ
心理援助の基礎である臨床心理学は歴史の浅い学問ですので、援助技術や理論も日々進歩しています。近年、医療現場では痛み診療や、うつ病診療における心理療法の活用により、そのありかたが大きく発展しました。しかし、新たな取り組みでは誰も経験したことのない困難に直面することが往々にしてあります。それらを個人的にも学問的にも克服していくことで、さらに周囲から必要とされる存在になるため、日々努力し、進化し続けることはたいへん重要です。これから心理の現場で働く方には、単に知識や技術を身に付けるだけでなく、心理援助がこれまで以上に社会の役に立つよう、発展させる役割も担っていることを自負していただければよいと思います。
また、心理援助は患者さまだけでなく、他の専門職の援助や、自分の生きかたにも役に立つ技能です。自分自身がいかに “いきいき” できるか探求することも、心の専門家としては重要なことだと思います。自分の生きかたとして、この仕事を生きがいに思えることが何よりも大切なことかもしれません。
1週間のスケジュール
月~水曜日:A総合病院のペインセンター勤務木曜日:B総合病院の緩和ケア病棟勤務
金曜日:クリニック(小児科/内科)勤務
土曜日:クリニック(ペインクリニック)勤務