飯塚病院
臨床心理室 主任
松尾純子
飯塚病院は全44科の総合病院で、常勤の10名の臨床心理士が、小児センター・心療内科・リエゾン精神科・緩和ケアなどからの依頼に対応しています。さまざまな学派の知識や技法を活かして心理士同士がすぐに相談できることが強みです。
通常、カウンセリングというと1:1の面接室をイメージされることが多いと思いますが、当院では、臨床心理士が現場に赴き、チームの一員として多職種と連携しながら患者さんとそのご家族に関わることもあります。そのほかにも研修医支援をはじめとする職員のメンタルサポートや乳幼児健診を行ったり、教育・医療の現場で働く専門職を対象とした講演なども行っています。
私の担当は主任業務と周産期・救急領域で、周産期ではこれから赤ちゃんを迎え、家族になっていくプロセスに同行したり、救急領域では不慮の事故での緊急支援に携わったりしています。言語によるカウンセリングだけでなく臨床動作法というからだを使ったカウンセリングも行っています。
しかしあるとき、現職の臨床心理士の方から直接お手紙をいただく機会があり、1人でも臨床家として実際に仕事をしている方がいるのならと、可能性にかけて心理系大学院に進学しました。進学先の決定にあたり図書館で論文を取り寄せ、実際に執筆者の先生にお会いできたときには、クライエントに接するあたたかくしなやかな姿勢と論理的思考の鋭さに触れ、こんな臨床家に近づけたらと心が躍りました。そしてずっと疑問に思い、悩んでいたことがいともあっさりと心理臨床や精神医学の専門書にまとめられているのを発見し、驚きと同時に、「こんなことを考えているのは自分だけじゃなかった!」と安心も生まれました。
生きていく間には、路頭に迷うような出来事がありますが、そのときにそっと伴走できるような人になれたらと思い、臨床家を目指しました。
そのためはじめは戸惑い、実際クライエントに会いはじめると、その人の人生に大きく関わることへの畏れも強く出てきました。憧れていた先生に近づくにはほど遠く(恐らくずっと遠いのです)、毎日が勉強の連続でした。私は歩みの速いほうではなかったのですが、根気強く指導してくださる良き師、良き先輩に恵まれたと感謝しています。病院は専門職の集団であり、現場ではまた、他職種の師がたくさんいます。そこでは、個別面接から得られるものとはまた別の「場」が動くこと、チームで取り組むダイナミックな動きが感じられます。
あるとき、同じチームの医師から、「なぜこの仕事を続けられるのか(しんどくないのか)」と聞かれ、考えたことがありました。人の回復力は素晴らしく、苦しんでいたクライエントがふと顔を上げ歩みだそうとする瞬間に立ち合わせていただけることは、とても貴重なことだと感じています。私の場合はこのような瞬間が仕事を続ける原動力になっているのだと思います。
臨床に出て20年以上経ちますが、恩師はもちろん若手のメンバーや多職種の人から学ぶことも多く、「ああ、自分は一生学ぶ仕事に就いたのだ」と感じています。
また、2018年11月には心理職初の国家資格である公認心理師も誕生しました。これまで以上にクライエントや家族、組織や社会に対しての責任が問われることになります。
自分は常にこころを動かして誠実に接しているか、自分自身を見つめ、振り返るために私自身もスーパービジョンを受け、また、若手のサポートもできるように努めていきます。先駆者から受け継いだものに磨きをかけ、次の世代に引き継げるよう、そしてそれが予防を含め、心理支援を必要とするより多くの人々に届けられるよう、全国の仲間と共に、「心理士(師)に会うのは当たり前」の世の中に近づけるようにと考えています。
臨床心理士はAIが普及しても残る10の仕事のひとつといわれています。ぜひみなさんに現場でお会いできることを楽しみにしています。
土・日・祝日は休日のため、学会や研修会などを入れることもできます。
臨床心理室 主任
松尾純子
いまの働きかた
飯塚病院は全44科の総合病院で、常勤の10名の臨床心理士が、小児センター・心療内科・リエゾン精神科・緩和ケアなどからの依頼に対応しています。さまざまな学派の知識や技法を活かして心理士同士がすぐに相談できることが強みです。
通常、カウンセリングというと1:1の面接室をイメージされることが多いと思いますが、当院では、臨床心理士が現場に赴き、チームの一員として多職種と連携しながら患者さんとそのご家族に関わることもあります。そのほかにも研修医支援をはじめとする職員のメンタルサポートや乳幼児健診を行ったり、教育・医療の現場で働く専門職を対象とした講演なども行っています。
私の担当は主任業務と周産期・救急領域で、周産期ではこれから赤ちゃんを迎え、家族になっていくプロセスに同行したり、救急領域では不慮の事故での緊急支援に携わったりしています。言語によるカウンセリングだけでなく臨床動作法というからだを使ったカウンセリングも行っています。
心理職をめざした理由
高校生のころ、「子どもと関わる仕事に就きたい」と思っていましたが、教育学よりもっと幅広い視点から子どもを捉えたいと考え、児童文化学を選択しました。やがて心理療法に興味を持ちましたが、教授から「国内では心理士の立場はまだ保証されていないから」と教職に就くことを勧められました。しかしあるとき、現職の臨床心理士の方から直接お手紙をいただく機会があり、1人でも臨床家として実際に仕事をしている方がいるのならと、可能性にかけて心理系大学院に進学しました。進学先の決定にあたり図書館で論文を取り寄せ、実際に執筆者の先生にお会いできたときには、クライエントに接するあたたかくしなやかな姿勢と論理的思考の鋭さに触れ、こんな臨床家に近づけたらと心が躍りました。そしてずっと疑問に思い、悩んでいたことがいともあっさりと心理臨床や精神医学の専門書にまとめられているのを発見し、驚きと同時に、「こんなことを考えているのは自分だけじゃなかった!」と安心も生まれました。
生きていく間には、路頭に迷うような出来事がありますが、そのときにそっと伴走できるような人になれたらと思い、臨床家を目指しました。
実際になってみて
それでも自分がこんなに大きな病院で働くとは夢にも思っていませんでした。もともとはこぢんまりとした相談室を想像していたからです。そのためはじめは戸惑い、実際クライエントに会いはじめると、その人の人生に大きく関わることへの畏れも強く出てきました。憧れていた先生に近づくにはほど遠く(恐らくずっと遠いのです)、毎日が勉強の連続でした。私は歩みの速いほうではなかったのですが、根気強く指導してくださる良き師、良き先輩に恵まれたと感謝しています。病院は専門職の集団であり、現場ではまた、他職種の師がたくさんいます。そこでは、個別面接から得られるものとはまた別の「場」が動くこと、チームで取り組むダイナミックな動きが感じられます。
あるとき、同じチームの医師から、「なぜこの仕事を続けられるのか(しんどくないのか)」と聞かれ、考えたことがありました。人の回復力は素晴らしく、苦しんでいたクライエントがふと顔を上げ歩みだそうとする瞬間に立ち合わせていただけることは、とても貴重なことだと感じています。私の場合はこのような瞬間が仕事を続ける原動力になっているのだと思います。
臨床に出て20年以上経ちますが、恩師はもちろん若手のメンバーや多職種の人から学ぶことも多く、「ああ、自分は一生学ぶ仕事に就いたのだ」と感じています。
これからの展望・希望
総合病院の臨床心理室として、心理的支援を必要とする方に私たちの支援が届けられるように、組織のなかで生き残ることのできる部署を目指していきます。また、2018年11月には心理職初の国家資格である公認心理師も誕生しました。これまで以上にクライエントや家族、組織や社会に対しての責任が問われることになります。
自分は常にこころを動かして誠実に接しているか、自分自身を見つめ、振り返るために私自身もスーパービジョンを受け、また、若手のサポートもできるように努めていきます。先駆者から受け継いだものに磨きをかけ、次の世代に引き継げるよう、そしてそれが予防を含め、心理支援を必要とするより多くの人々に届けられるよう、全国の仲間と共に、「心理士(師)に会うのは当たり前」の世の中に近づけるようにと考えています。
心理職に就きたいと思っている学生へ
生きていくうえで誰もが遭遇する可能性のある出来事により、人には揺れが生じます。それは発達のつまずきかもしれないし、なんらかの喪失体験であるかもしれません。救命を主体とする医学のなかに臨床心理学の視点が入ることで、患者さんのこころが置き去りになるのを防ぐことができるときがあります。臨床心理士はAIが普及しても残る10の仕事のひとつといわれています。ぜひみなさんに現場でお会いできることを楽しみにしています。
1週間のスケジュール
月~金曜日:8:30~17:00 病院勤務土・日・祝日は休日のため、学会や研修会などを入れることもできます。