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トップページ こころJOB 公認心理師による小児特定疾患カウンセリング料の評価|2020年度診療報酬改定
多摩大学医療・介護ソリューション研究所 副所長
多摩大学大学院 客員教授
関西学院大学院 非常勤講師
石井 富美

Q.2020年度診療報酬改定の全体的なポイントは?

A.
今回の診療報酬改定は、「働き方改革」が大きな柱です。そして、これまで進められてきた「地域包括ケアシステム」のさらなる推進が求められています(図1)1)

地域包括ケアシステムは、医療と介護だけでなく、障害福祉サービスとの連携も必須であることが強調されています。背景には、これまで障害福祉サービスを受けてきた人々が、高齢化に伴い、医療や介護のサービスを受ける必要が生じている現状があります。

前回(平成30〈2018〉年)の改定では介護保険サービスと障害福祉サービスの双方を提供しやすい共生型サービスの仕組みがつくられました。

さらに今回は、精神医療が「地域移行・地域生活支援を含む質の高い精神医療の評価」として大きく取り上げられています(図2)1)。医療機関での診断や治療と、在宅医療での精神科疾患を持つ方への訪問診療や訪問看護などの、シームレスな連携が推進されており、情報共有や評価基準の統一などが盛り込まれています。

個別疾患では、依存症に対してニコチン依存症のほかにギャンブル依存症の評価が新設されました。また、発達障害に対して、小児特定疾患カウンセリング料の適応範囲が見直され、ここで、公認心理師によるカウンセリングに対する評価が新設されています。

先ほども述べましたが、今回の改定には働き方改革が大きく関わっています。社会保障審議会などでは、「2040年を展望し、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現」の議論が進んでいます。ここで描かれている医療の役割は、すべての人が働きやすい環境を作ることとなっています。

自閉症であっても、特性を活かした仕事ができます。家から出られない身体の状態でもITやロボット技術を駆使して社会との関わりを持つことができます。

そういった生き方を支えるためにも、医療が十分なサポートをしていこうという働きです。医療や介護を受けながら、また身体や心の状態で生きづらさを感じながらも働ける環境を作ることに重点が置かれています。外来における療養・就労両立支援指導料の対象疾患の拡充などもその一つです。

Q.公認心理師による小児特定疾患カウンセリング料の評価はなぜ新設されたのでしょうか?

A.
これまで、医療機関では「臨床心理士」が活躍していました。医師の指示のもと、患者さんや家族などに心理学的な援助や判定を行い、診療報酬上も、発達および知能検査、人格検査などの算定が可能です。

臨床心理士は、医療機関だけでなく、福祉や教育の機関で、小児の発達障害などに対する専門的なケアにも携わっています。

発達障害者支援法が施行されてから(平成17〈2012〉年4月施行)、自閉症スペクトラムに代表される発達の遅れ、脳機能の先天的な障害の判定を受け、専門的なケアを受ける小児が増えています(図3)2)

平成18(2006)年と平成25(2013)年の人数を比較してみると、自閉症(ASD)は約3.1倍、注意欠陥多動性障害(ADHD)は約6.3倍、学習障害(LD)は約8倍となっています。このような現状から、発達障害の診断を受ける初診の待機期間が長期化しており、3カ月から半年先まで予約が取れない地域もあるようです。

小さな子どもであれば、少しでも早く専門的なケアを受けることで、発達の遅れへの適切なサポートや情緒の安定への効果が期待できます。保護者への対応方法の提供や心のケアにより、生活環境も整えることができます。

この課題を解決するために、前回(平成30〈2018〉年)の診療報酬改定では、小児科だけでなく心療内科の医師も診断ができるようになりました。今回はさらに、診断を行った医師の治療計画に基づいて、公認心理師が、療養上必要なカウンセリングを行うことが認められたことになります(図4)1)

すでに院内で仕事をしている臨床心理士が公認心理師とみなされるので、診療報酬の算定要件を満たしている医療機関が多いと思いますが、あらためて公認心理師という国家資格が注目されるきっかけになったのではないでしょうか。

これまで病院以外の場所で専門性を活かして子どもたちや家族への心理的サポートを行ってきた公認心理師も、その力を医療機関の中で発揮していただきたいと思います。

Q.公認心理師による小児特定疾患カウンセリング料の算定要件は?

A.
小児特定疾患カウンセリング料の算定要件は以下の通りです。20分以上のカウンセリングが必要となりますので注意してください。また、定期的に医師による診察が求められています。あくまでも治療計画に基づいたカウンセリングのため、医師としっかり連携しましょう。

精神・発達障害の患者さんのほか、登校拒否の人とその家族、または同居者から虐待を受けているあるいはその疑いがある人も対象となっています。

【公認心理師による場合の算定要件】
(1)一連のカウンセリングの初回は医師が行うものとする。
(2)医師の指示の下、公認心理師が当該医師による治療計画に基づいて療養上必要なカウンセリングを20分以上行った場合に算定できる。
(3)継続的にカウンセリングを行う必要があると認められる場合においても、3月に1回程度、医師がカウンセリングを行うものとする。
 
対象患者
ア 気分障害の患者
イ 神経症性障害の患者
ウ ストレス関連障害の患者
エ 身体表現性障害(小児心身症を含む。また、喘息や周期性嘔吐症等の状態が心身症と判断される場合は対象となる。)の患者
オ 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(摂食障害を含む。)の患者
カ 心理的発達の障害(自閉症を含む。)の患者
キ 小児期又は青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(多動性障害を含む。)の患者
この他に、登校拒否の者及び家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがある者


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小児特定疾患カウンセリング料
イ 医師による場合
(1)月の1回目 500点
(2)月の2回目 400点
ロ 公認心理師による場合 200点
(1)「イ」については、乳幼児期及び学童期における特定の疾患を有する患者及びその家族に対して日常生活の環境等を十分勘案した上で、小児科(小児外科を含む。以下 この部において同じ。)又は心療内科の医師が一定の治療計画に基づいて療養上必要なカウンセリングを行った場合に算定する。
(2)「ロ」については、乳幼児期及び学童期における特定の疾患を有する患者及びその家族等に対して、日常生活の環境等を十分勘案した上で、当該患者の診療を担当する小児科又は心療内科の医師の指示の下、公認心理師が当該医師による治療計画に基づいて療養上必要なカウンセリングを20分以上行った場合に算定する。なお、一連のカウンセリングの初回は当該医師が行うものとし、継続的にカウンセリングを行う必要があると認められる場合においても、3月に1回程度、医師がカウンセリングを行うこと。
(3)カウンセリングを患者の家族等に対して行った場合は、患者を伴った場合に限り算定する。
(4)小児特定疾患カウンセリング料の対象となる患者は、次に掲げる患者である。
ア 気分障害の患者
イ 神経症性障害の患者
ウ ストレス関連障害の患者
エ 身体表現性障害(小児心身症を含む。また、喘息や周期性嘔吐症等の状態が心身症と判断される場合は対象となる。)の患者
オ 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(摂食障害を含む。)の患者
カ 心理的発達の障害(自閉症を含む。)の患者
キ 小児期又は青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(多動性障害を含む。)の患者
(5)小児特定疾患カウンセリング料の対象となる患者には、登校拒否の者及び家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがある者を含むものであること。
(6)小児特定疾患カウンセリング料は、同一暦月において第1回目及び第2回目のカウンセリングを行った日に算定する。
(7)「ロ」を算定する場合、公認心理師は、当該疾病の原因と考えられる要素、治療計画及び指導内容の要点等についてカウンセリングに係る概要を作成し、指示を行った医師に報告する。当該医師は、公認心理師が作成した概要の写しを診療録に添付する。
(8)小児特定疾患カウンセリング料を算定する場合には、同一患者に対し第1回目のカウンセリングを行った年月日を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
(9)電話によるカウンセリングは、本カウンセリングの対象とはならない。
(10)平成31年4月1日から当分の間、以下のいずれかの要件に該当する者を公認心理師とみなす。
ア 平成31年3月31日時点で、臨床心理技術者として保険医療機関に従事していた者
イ 公認心理師に係る国家試験の受験資格を有する者


Q.今後、診療報酬上、公認心理師の算定項目を増やすために、どういった心構えや取り組みが心理師に必要でしょうか。先生のお考えをお聞かせください。

A.
今回、小児に対するカウンセリングのニーズの高まりが評価に反映されました。

地域包括ケアシステムでは今後、障害福祉サービスとの連携が必須です。先に述べたように、共生型サービスの充実が求められています。

同じように、これまで心のケアを受けていた方々が年齢を重ねるに伴い、医療や介護のサービスを受けるケースが増えていくことでしょう。そして一般の方においても、治療しながらの生活の中で、精神的な不安を抱える人が増えていくことも考えられます。

公認心理師の皆さんには、医療や介護制度の仕組みを知ったり、医療や介護が必要になる状態になり、さまざまな不自由を感じる人々の療養環境への配慮の仕方なども知識として身に付けてもらったりするとよいのではないかと思います。たとえば認知機能が落ちている方への声掛け、在宅酸素の方と話すときの時間や話すスピードなど、身体的な不自由さからくる不快感やもどかしさへの配慮を先にしなければ、心のケアもうまくいきません。

特に長期の療養生活を送る方、介護施設などで暮らす高齢の方に対する心のケアはこれまで以上に求められています。

医療や介護サービスを受けながら心のケアを必要とする方々に対して、専門知識を提供する機会が増えることで、今後の活躍の幅が広がると思います。

 

引用・参考文献
1)厚生労働省.令和2年度診療報酬改定の概要 令和2年3月5日版.2020.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00001.html(2020年5月閲覧)
2)文部科学省.平成29年度通級による指導実施状況調査結果について.2018.https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/__icsFiles/afieldfile/2018/05/14/1402845_03.pdf(2020年5月閲覧)



著者プロフィール

経営企画、新規事業企画、人材育成、医療ビジネス研修、診療データの分析など、医療機関での経営戦略策定・運営に数々の実績を持つ。経営情報学修士(MBA)、医療情報技師、認定医療メディエーター。メディカ出版主催『診療所のための2020診療報酬改定【直前】セミナー』講師。