はじめに
キャリアアップとは「経歴・経験を高めること」です。良い条件の職場に転職し、新たな経験を積むこと。今の職場で経験を重ね、昇格したり新たなポジションを獲得したりすること。どちらもキャリアアップに含まれます。転職してキャリアアップする
キャリアアップの方法の1つは「転職」です。公認心理師資格を取得し、心理専門職として活躍できる職場で働きたいと考える人もいるでしょう。新たな領域で経験を積みたい、正社員になりたい、年収を上げたい、育児が落ち着いたので復職したい。転職にはさまざまな理由があります。転職でキャリアアップに成功した心理士の声を紹介します。
これまでは病院や学校、教育相談所などの分野で心理職に携わってきたので、産業分野は初めての経験でした。
今の勤務先では役職に関係なく「◯◯さん」と「さん」付けで呼び合い、新しいアイデアや意見を自由に言える風通しのよい会社で、転職してよかったと思います。
将来は、企業コンサルタントになりたいと思っています。
心理職と言っても業界によって業務内容が全く異なります。自分の気になる求人情報には共通点があると思うので、自分は何がしたいのか、探しながら考えていけばよいのではないでしょうか。
ただ、心理士の転職は、知り合いの紹介で決まるケースも多く、求人情報が豊富に公開されているわけではありません。また、医療機関や教育機関など人気の職場では、求人情報を出すと、すぐにたくさんの応募が集まります。
したがって、転職を成功させるには、他の人には負けない自身の経歴・スキル・熱意を書類選考や面接でアピールする必要があります。
職場によっては、求める人材に想定年齢を設けている場合があるため、転職のタイミングも大切です。定年制を設けている企業だと、それまで何年働けるかが選考基準に加わることもあります。いつ転職したいのか、キャリアプランを固めておきましょう。
今の職場でキャリアアップする
職場での理解者づくり
キャリアアップのもう1つの方法は、「今の職場で仕事の幅を広げる」ことです。ですが、今の職場で仕事の幅を広げるためには、職場での理解者づくりが必要な場合も多いでしょう。そのために、まずは心理士の仕事を職場にきちんと理解してもらう必要があります。「こころJOB」では、さまざまな立場の方にヒアリングを行ってきました。そのときによく聞いたのは、「心理士は何ができるんですか」「わたしたちの業務のどこに活躍してもらえそうですか」「こういった仕事を任せられる心理士はいますか」といった意見です。
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの「公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査」のインタビュー調査でも、他職種からの「何ができるのかを自ら伝えてほしい」という意見が紹介されていました1)。
どういった仕事をしているのか。何ができるのか。どの業務なら自信をもって遂行できるのか。心理職以外がイメージできる形で、心理士は周囲にアプローチしていく必要があるでしょう。
アプローチには、「心理士を介入させたら再入院率が○○%改善した」などのデータや、「△△社では心理士にストレスチェック後の面談業務を担当させている」のような比較例も有効でしょう。また、学会での発表歴や研修歴など、勤務先以外での実績も示しましょう。
職域を限定しすぎない
職場での理解者づくりにもう一つ大切なのは、職域を限定しすぎないことです。「心理以外の仕事はしません」では、他のメンバーが声をかけづらくなります。柔軟な姿勢が求められます。個人の能力の向上
たとえば総合病院の精神科に勤務する心理士が、院内のリエゾンチームに参加することになったとき、相談が多い疾患知識、終末期や緩和医療に関する知識はもちろん、多職種連携のためのコミュニケーション能力が必要です。スクールカウンセラーが、大勢の生徒に対してメンタルヘルス研修を行うとなったときには、プレゼンテーション能力や資料作成能力が求められます。
このように、仕事の幅を広げるには、個人の能力の向上も不可欠です。
新型コロナウイルス感染拡大によって、あらゆる業界の研修・セミナーがオンライン化しています。会場費等がかからないため受講料もリーズナブルな場合が多いです。この機会に、ぜひ参加してみてください。
キャリアの描き方
もちろん、適切な方法で職場に働きかけても環境が改善されなかった場合は、転職を視野に入れてみてください。そもそも、キャリアプランをどう描けばよいか、迷っている方もいると思います。
本ウェブサイトの連載「わたしのヒストリー」では、あらゆる職場で働く心理士の方に、これまでの経歴ややりがいなどを紹介いただいています。
ぜひご参考ください。
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「こころJOB」では今後、社会におけるメンタル不調者を減らすため、心理士の「教育」に特化していきます。メンタル不調者を減らすには、対象者への支援も欠かせませんが、不調に陥る前の予防、つまり不調者を出してしまう集団(組織)そのものにアプローチできる心理士を増やすことが大切だと思っています。
また、今回取り上げた意見のように、組織の一員として活躍できる心理士を増やすことも大切だと考えます。
「こころJOB」のコンテンツを利用して、新たなステージを切り開くお手伝いをさせてください。
参考文献 1)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター.厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業:公認心理師の養成や資質向上に向けた実習に関する調査.2020.
https://www.ncnp.go.jp/hospital/news/docs/ec328acccf3db1be68e791f3c9d8c562e710d37e.pdf(2020年8月24日閲覧)
(文・構成/こころJOB編集室)
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