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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】速報TOPiC「2024年度の診療報酬改定の要点」

三重大学医学部附属病院 感染制御部 部長 田辺正樹先生に「2024年度の診療報酬改定の要点」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

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2024年度の診療報酬改定の要点

はじめに

 2024年度の診療報酬改定は、6年に一度の介護報酬との同時改定となっている。4年におよぶ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への特別な対応が終了し、通常の医療提供体制に移行するにあたり、医療と介護との連携を含め、多くの変更が行われている[1]。また今回より、従来4月であった改定時期が6月1日施行に変更となっている点にも留意が必要である。

厚生労働省ウェブサイトの確認[2]

 診療報酬改定の内容を確認するには、「厚生労働省 令和6年度診療報酬改定」などのキーワードで検索し、厚生労働省ウェブサイト「令和6年度診療報酬改定について」にアクセスする(図1)[3]。概要を把握するため、図1-①にある「令和6年度診療報酬改定説明資料等について」を進み、図1-②にある説明資料「令和6年度診療報酬改定の概要」にて、改定の概要を確認する。医科点数や留意事項などの詳細は、診療報酬算定の別表第一(図1-③)、別添1(図1-④)を確認する。また、基本診療料の施設基準などについては、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)」(図1-⑤)を確認する。いずれの文章も大量で通読は難しいため、コンピュータの検索機能(Windowsの場合、CTRL+F)を用いて「感染」などで検索するとよい。

 説明資料のポンチ絵は、改定のポイントが分かりやすく提示されているが、既存の内容を把握できていないと、何が変わり、何が変わっていないかが理解しにくい。そのため、施設基準などの詳細について、可能であれば、今回の改定と前回(2022年度改定)を左右にならべ、自分の目で確認すると理解が進むと思われる。

図1

図1 令和6年度診療報酬改定ウェブサイト(文献3より引用)

「外来感染対策向上加算」「感染対策向上加算」改定の概要

 2024年4月から本格的にポストコロナ時代に突入するにあたり、診療報酬・介護報酬改定により、病院・診療所・都道府県・高齢者施設間の感染対策の連携をさらに進めていく方針が示された(図2)[3]。

図2

図2 ポストコロナにおける感染症対策に係る評価の見直しの全体像(文献3より引用)


 主に診療所を対象とした「外来感染対策向上加算」、病院を対象とした「感染対策向上加算1・2・3」の枠組みは継続しつつ、新興感染症発生時の対応に関する施設基準が変更され、第一種・第二種協定締結医療機関であることが要件とされた(表1)[3]。


表1 感染対策向上加算・外来感染対策向上加算の主な変更点(文献3より引用)

表1① 表1② 表1③ 表1④


 また、「外来感染対策向上加算」を算定する医療機関を対象に、発熱患者などへの診療に対する加算(+20点/回)として、「発熱患者等対応加算」が新設された。医療・介護連携の観点では、介護報酬改定[4]において、「高齢者施設等感染対策向上加算1・2」が新設され、新興感染症の対応を行う医療機関と連携し、医療機関が行う院内感染(病院感染)対策に関する研修に参加することの評価(10単位/月)や感染制御などの実地指導を受けることの評価(5単位/月)などが盛り込まれた(表2)[4]。


表2 感染症対応に関する介護報酬の主な変更点(文献4より引用)

表2① 表2②

 これを受け、「感染対策向上加算1・2」の施設基準に、「介護保険施設等から求めがあった場合には、当該施設等に赴いての実施指導等、感染対策に関する助言を行うとともに、院内感染対策に関する研修を介護保険施設等と合同で実施することが望ましい」という基準が追加された(表1-③)[3]。

 また、薬剤耐性(AMR)対策として、外来における抗菌薬適正使用を推進するため、「外来感染対策向上加算」および「感染対策向上加算」を算定する医療機関を対象に、「抗菌薬適正使用体制加算」(月1回5点)が算定された。これまで、診療報酬はストラクチャー(人員体制など)またはプロセス(ラウンドやカンファレンスの実施など)で評価されていたが、直近6ヵ月間に外来で使用された抗菌薬のAccess 割合が60%以上[5]など、アウトカム指標が初めて導入された。

感染症入院患者に対する感染対策および療養環境に対する評価

 感染管理が必要な重要な感染症の患者に対して、適切な感染対策を講じたうえで入院医療を提供した場合の加算として、「特定感染症入院医療管理加算」(治療室の場合200点、それ以外の場合100点)が新設された。なお、二類感染症の患者については、「二類感染症患者入院診療加算」(250点)が継続されているため、新設される加算については、二類感染症患者は含まれていない(表3)[3]。また、感染症の入院患者に対する個室・陰圧室管理の評価として、従来二類感染症患者に限定されていた「二類感染症患者療養環境特別加算」が「特定感染症患者療養環境特別加算」に名称変更され、対象となる感染症の範囲が拡大された(個室加算300点、陰圧室加算200点)。


表3 感染症入院患者に対する感染対策及び療養環境に対する評価(文献3より引用)

表3① 表3②

その他

 早期からの急性期リハビリテーション提供の評価として「急性期リハビリテーション加算」が新設され、その対象患者に「特定感染症入院医療管理加算」の対象となる感染症、二類感染症および新型インフルエンザ等感染症の患者が含まれている。また、小児抗菌薬適正使用支援加算の算定要件が見直されており、従来の急性気道感染症、急性下痢症に加え、新たに急性中耳炎および急性副鼻腔炎が対象疾患となっている。このほか、歯科領域において、「歯科外来診療感染対策加算」が新設され大幅な変更となっているため、歯科のある医療機関においては、確認しておきたい。

 2024年度診療報酬改定において、感染対策分野について種々の変更が行われており、細かな点での疑問は多くみられると思われる。今回6月に改定が行われるため、改定後に出される疑義解釈を確認していくことが重要である。


【引用・参考文献】

1) 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症対策本部事務連絡 新型コロナウイルス感染症の令和6年4月以降の医療提供体制及び公費支援等について.令和6年3月5日.https://www.mhlw.go.jp/content/001219079.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/001219109.pdf

2) 田辺正樹.2022年度の診療報酬改定のポイント.INFECTION CONTROL.31(8),2022,4‒10.

3) 厚生労働省.令和6年度診療報酬改定について.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html

4) 厚生労働省.令和6年度介護報酬改定について.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html

5) AMR 臨床リファレンスセンター.抗菌薬マスター.https://amrcrc.ncgm.go.jp/surveillance/030/20181128172757.html


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*INFECTION CONTROL33巻6月号の掲載の先行公開記事となります。

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