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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「隔離予防策ガイドライン改訂の草案について」

矢野邦夫先生に「隔離予防策ガイドライン改訂の草案について」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。

*INFECTION CONTROL33巻6月号の掲載の先行公開記事となります。

「隔離予防策ガイドライン改訂の草案について」

  CDCが隔離予防策ガイドライン改訂のための草案を公開している。草案について、CDCがブログに記載している内容の要点を紹介する[https://blogs.cdc.gov/safehealthcare/draft-2024-guideline-to-preventtransmission-of-pathogens-in-healthcare-settings/]。

COVID-19から得られた教訓

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、医療従事者、患者、その他の人々を呼吸器感染症の伝播から守るために、医療現場で実施されてきたアプローチを大きく変えた。実験データと観察データは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重要な伝播経路は感染者から発生する空気中の小さな粒子の吸入を介することを示している。感染者が咳やくしゃみをしたときに発生する飛沫やしぶきが、周囲の人々の粘膜に付着する伝播経路に加えて、感染性粒子の短距離での吸入が主な伝播経路であることが広く認識されている。「感染症には伝播できる特徴的な距離がある」という見解は、感染者の近傍での感染性粒子の高い濃度や病原体固有の要因の違い(感染を引き起こすのに必要な吸入量や特定の病原体が感染性を維持することができる時間)などを反映している。草案では、伝播経路を「空気を介する伝播」と「接触を介する伝播」という二つの大きなカテゴリーに分類しており、ブログでは前者について記述されている。

空気を介する伝播

 「空気を介する伝播」というカテゴリーのなかで、大きな飛沫による飛沫感染と小さな粒子による空気感染というこれまでの二分法は解消され、粘膜表面への沈着や吸入を介して伝播する可能性のある「連続した粒子サイズ」が存在することが認識された。新興病原体をもつ人々をケアする際には、空気を介する伝播を予測し、呼吸器防護具を使用することの重要性は、COVID-19のパンデミックから学んだ教訓の一つである。

日常空気予防策と特別空気予防策

 最初の問題は、空気を介して伝播するが、通常は長距離を介して伝播することはない病原体をどのように管理すべきかを決定するアプローチである。草案では、このような病原体に対して「日常空気予防策」と「特別空気予防策」という二つのオプションが示されている。「日常空気予防策」では、ほとんどの人にとって重篤ではない一般的な感染症を対象としたものであり、その予防策では、医療従事者がマスク(サージカルマスクやフェイスマスクなど)を着用する必要があると明記されている。「特別空気予防策」は、重篤な疾患を引き起こす可能性が高い、または未知の感染症の伝播を防ぐための対策であり、医療従事者がN95レスピレータを着用する必要があると明記されている。

 「特別空気予防策」を、重篤で生命を脅かす疾患を引き起こす新興病原体のみに限定する感染対策と解釈してしまうと、SARS-CoV-2はもはや新興病原体ではないため、日常空気予防策に戻ってしまうのではないかとの懸念がある。また、long COVID などの有害な転帰を重篤な疾患を表すものとみなされなければ、特別空気予防策を適用するかどうかを決定する際に考慮されないかもしれない。

空気を介する伝播での考慮事項

 空気を介する伝播のリスクに関する重要な考慮事項には「長距離にわたって効率的に拡散するか否か(換気システムを伝って移動するかなど)」「伝播力(病原体、感染者、リスクに晒された人、接触パターン、環境条件に関連する要因によって決定される拡散のしやすさ)」「医療従事者、患者、面会者などが感染したときの罹患率と致死率の程度」がある。罹患率と致死率は、ワクチン接種や過去の感染による集団の防御免疫のレベル、効果的な治療の利用可能性、感染のリスクを高める個人の危険因子などの要因によって影響される。


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*INFECTION CONTROL33巻6月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。