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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「免疫抑制患者と組換え帯状疱疹ワクチン」

矢野邦夫先生に「免疫抑制患者と組換え帯状疱疹ワクチン」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。


「免疫抑制患者と組換え帯状疱疹ワクチン」

 帯状疱疹は加齢とともに発生頻度が増加するが、抗がん剤治療や移植によって免疫が抑制されるときにも発生しやすくなる。CDCが免疫不全の成人における組換え帯状疱疹ワクチン(recombinant zoster vaccine, RZV)についてのガイダンスを公開しているので紹介する[https://www.cdc.gov/shingles/vaccination/immunocompromised-adults.html]。

接種スケジュール

 帯状疱疹の既往歴や帯状疱疹生ワクチンの接種歴に関係なく、RZVを2回接種する。通常、RZVの2回目接種は初回接種から2~6ヵ月後に実施する。しかし、免疫不全または免疫抑制状態にある、またはそうなる可能性があり、短期間で接種シリーズを完了することで利益が得られる人には、初回接種から1~2ヵ月後に2回目を接種することができる([例]接種間隔を短くすることによって、免疫抑制が強い期間中のワクチン接種を回避しやすくなる可能性がある)。

接種タイミング

 可能であれば、免疫抑制状態になる前にワクチンを接種する。免疫抑制状態になる前のワクチン接種が不可能な場合は、免疫能が最も強くなる時期にワクチンを接種する。患者の免疫能のレベルを評価する際に考慮すべき要素は「病気の重症度と期間」「臨床的安定性」「合併症と併存疾患」「免疫抑制の可能性のある治療」である。そして、「ワクチン接種を延期するリスク(免疫不全患者における帯状疱疹や関連合併症のリスク増加を軽減できないリスク)」を「強い免疫抑制期間中に接種した場合のRZVに対する反応が低下する可能性」と比較検討する必要がある。

造血幹細胞移植レシピエント

 自家造血幹細胞移植では、予防的抗ウイルス療法(アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル塩酸塩など)の中止のタイミングに応じて、移植後少なくとも3~12ヵ月後にRZVを接種する。同種造血幹細胞移植では、予防的抗ウイルス療法の中止のタイミングに応じて、移植後少なくとも6~12ヵ月後にRZVを接種する。いずれも、抗ウイルス療法を中止する前にワクチン接種を受けることが望ましい。

固形臓器移植レシピエント

 可能であれば、移植前にワクチンを接種する。移植前のワクチン接種が不可能な場合は、移植後少なくとも6~12ヵ月、できれば移植片機能が安定しており(最近拒絶反応がない)、維持免疫抑制のときに接種する。

がん患者

 可能であれば、化学療法、免疫抑制剤による治療、放射線療法、脾臓摘出術の前にRZVを接種する。化学療法、免疫抑制剤による治療、放射線療法、脾臓摘出術前のワクチン接種が不可能な場合は「免疫系が急性的に抑制されなくなったとき」または「継続的な免疫抑制療法を受けている患者では免疫能が最も強いと思われるとき」にRZVを接種する。抗B細胞療法([例]リツキシマブ)を受けている患者の場合、次の予定される治療の約4週間前にRZVを1回接種する。

HIV感染者

 一部のワクチンではウイルス抑制またはCD4細胞数の増加により高い免疫原性がみられるが、これらの基準が満たされていない場合、特にそれがワクチン接種の大幅な遅延につながる場合には、RZVの接種を遅らせる必要はない。

自己免疫疾患および炎症性疾患のある患者

 ワクチン接種は、自己免疫疾患や炎症性疾患が十分に管理されている状態で(つまり、急性疾患や再燃中は避けて)最適に実施する。可能であれば、免疫抑制剤を開始する前にRZVを接種する。免疫抑制剤の開始前のワクチン接種が不可能な場合は、免疫抑制が弱まっていると予想されるときにRZVを接種する。


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*INFECTION CONTROL33巻5月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。