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トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing 【特集】胎児心拍数波形33症例判読トレーニング-波形8パターンのアセスメントに強くなる・重大波形を見落とさない!|ペリネイタルケア2024年4号|上塘正人|PerinatalCareクローズアップ|#019

 胎児心拍数モニタリングの原理は動物実験などによる胎児循環生理学に立脚しています。その判読ポイントである胎児心拍数基線、基線細変動、および一過性頻脈、一過性徐脈は化学受容体を起点とする自律神経および血管作動性ホルモンが形成する反射回路によって制御されています。化学受容体は動脈血酸素分圧や二酸化炭素分圧、pHの変化に対して反応し、この回路を通して胎児心拍数パターンに影響を与えます。化学受容体は脳の上流である頸動脈に位置しており、このことは生理学的に最も重要な意味を持っています。
 つまり、化学受容体は脳への酸素供給を監視するセンサーの役目を果たしており、胎児心拍数パタ ーンの変化は脳の酸素供給状態や循環動態を間接的に表現していると言えるのです。胎児心拍数パターンの構成要素は各々異なる生理病理学的意義を持っています。一過性徐脈は自律神経反射の誘因となるストレスの種類(低酸素、血圧変化、児頭圧迫など)を示し、基線細変動や一過性頻脈は自律神経回路自体の健常性(酸血症、中枢・末梢神経障害)および、脳の活動状況(睡眠状態など)を表現しています。臨床において胎児心拍数モニタリングを評価する際はこれらの生理学的基礎知識を理解し、胎児評価を行う必要があります。
 「第8回産科医療補償制度再発防止に関する報告書」において、胎児心拍数モニタリングを正しく判読・対処できていない例が5.4%存在することが既に明らかにされていますが、いまだに改善されていない医療施設も散見されています。胎児の健常性の悪化に気づかず、そのことが脳性麻痺発症につながっている症例があるのです。多くの場合、助産師が妊産婦のベッドサイドで胎児心拍数モニタリングを行います。医師はもちろんですが、助産師や医療スタッフは胎児心拍数モニタリングを正しく理解し、胎児に今、何が起こっているかを判断できる能力をつけることが迅速な医療介入に直結することを知っておかねばなりません。本企画では胎児心拍数モニタリングから、胎児に今、何が起こっているのか、どういう状況に陥る可能性があるのかを、生理学的側面からも考えていただくように構成しました。今回の企画が少しでも皆様の臨床に役立ち、健やかな児の成長につながることを祈っています。

日本医療機能評価機構産科医療補償制度.テーマに沿った分析【妊娠・分娩管理】:胎児心拍数陣痛図の判読について


プランナー

鹿児島市立病院 産婦人科 部長
上塘正人



本記事は『ペリネイタルケア』2024年4月号特集扉からの再掲載です。

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