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トップページ 新生児・小児/助産/ウィメンズヘルス Cure&Care&Nursing 新生児看護との出会い たくさんの人に支えられて|久保田藍|新生児医療の あ!のひと|#002

新生児看護との出会い たくさんの人に支えられて

Kちゃんとご家族との出会い、そして認定看護師へ
 看護学生のころ、母性実習で分娩に立ち会い、強く感銘を受けた。その後、看護師になって初めて勤めた産院で、子宮内胎児死亡(IUFD)と診断され、誘発分娩となった母親の看護を経験した。悲しむ母親に、どんな言葉を掛ければよいのか分からず、母親と一緒に涙することしかできない自分が情けなかった。
 その後、友人の勧めでNICUに就職した。赤ちゃんの生きる力に魅了され、新生児看護が楽しくて仕方がなかった。NICU配属3年目の時、早産で生まれたKちゃんを担当させていただいた。Kちゃんは重度の肺高血圧症で、生後8カ月で永眠された。ご家族とはその後も定期的にお話しする機会があり、Kちゃんのお母さんが「お姉ちゃんに会わせてあげたかったな」と話された。当時は同胞面会が認められておらず、4歳のお姉ちゃんとKちゃんが対面することはかなわなかった。プライマリナースとして、ご家族の願いをかなえてあげることができなかった……という思いが、認定看護師を目指すきっかけとなった。

新生児看護が大好きな仲間たちとの出会い
 教育課程で学びたい私の思いを、上司や同僚、家族みんなが応援してくれた。まだ幼かった娘たちの寝顔だけでも見ることができたら……と、北里大学の教育課程まで片道約3時間かけて通った。過密スケジュールと課題で精一杯の半年間だったが、自分自身と向き合い、赤ちゃんにとっての最善のケアを考える時間は最高に楽しかった。そして、尊敬する教員や大好きな同期研修生との出会いは、私の一生の宝物である。

教育課程、専任教員としての新たな道
 2023年4月、獨協医科大学で特定行為研修を組み込んだ新生児集中ケア認定看護師教育課程が開講した。専任教員のお話をいただいた時は、身に余る大役を果たすことへの不安があった。長年勤めたさいたま市立病院を退職することは苦渋の決断であったが、3年間閉講していた教育課程の開講が何よりもうれしく、専任教員を引き受ける決意をした。開講して約8カ月、教員として至らないことも多く、内省の毎日だ。周産期医療を愛する 熱い気持ちを持った人たちに支えられながら、必死に駆け抜けた8カ月だったように思う。今後も初心を忘れることなく、研修生たちとともに成長し続けられる自分でありたい。

獨協医科大学地域共生協創センター
新生児集中ケア認定看護師教育課程専任教員
新生児集中ケア認定看護師、IBCLC
久保田 藍

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す!がおのひとこと 

 今の仕事は大好きなのだが、もうひとつ、好きなことがある。パンを焼くことだ。生地を膨らませる酵母を育ててパンを焼いたりもする。時間をかけ、ココロを込めて丁寧に作業をすると、ふっくら美味しいパンができる。優しさと繊細なケアを必要とする新生児看護に、少し通ずるところがあると思っている。最近は忙しくてなかなか焼けないのだが、いつか丁寧にパンを焼く老後を送るのが夢だ。


本記事は『with NEO』2024年2号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。

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