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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「米国の妊婦におけるインフルエンザ、Tdap、COVID-19のワクチン接種率」

矢野邦夫先生に「米国の妊婦におけるインフルエンザ、Tdap、COVID-19のワクチン接種率 」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。


「米国の妊婦におけるインフルエンザ、Tdap、COVID-19のワクチン接種率」

 インフルエンザ、Tdap(破傷風、ジフテリア、百日咳の成人用3種混合)、COVID-19ワクチンは、妊婦とその乳児におけるインフルエンザ、百日咳、COVID-19のリスクを軽減できる。CDCがこれらのワクチンの米国の妊婦における接種状況を報告しているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/pdfs/mm7239a4-H.pdf]。

ACIPの推奨

 予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices,ACIP)は、インフルエンザの流行期に妊娠している、または妊娠している可能性のあるすべての女性に、インフルエンザワクチン(妊娠中いつでも接種できる)を接種することを推奨している。ACIPはまた、各妊娠中(妊娠27週から36週の初期が望ましい)にTdapワクチンを接種することも推奨している。さらに、COVID-19ワクチンは、生後6ヵ月以上のすべての人(妊婦を含む)に接種することが推奨されている。

調査

 2022~23年のインフルエンザ流行期の妊婦におけるインフルエンザ、Tdap、COVID-19のワクチン接種率を評価するために、CDCは2023年3月28日から4月16日にかけて実施されたインターネットパネル調査のデータを分析した。

結果

 2022年10月から2023年1月までのいずれかの時点で妊娠していた調査回答者1,814人のうち、47.2%が妊娠前、または妊娠中にインフルエンザワクチンを接種していた。調査日までに出産経験のある回答者776人のうち、55.4%が妊娠中にTdapワクチンを接種していた。調査時点で妊娠していた女性1,252人のうち、27.3%が現在の妊娠前または妊娠中にCOVID-19の二価ワクチンの追加接種を受けていた。

 2019~20年から2022~23年のインフルエンザシーズン中に実施された調査に含まれる同じ質問のデータによると、「妊娠中にインフルエンザワクチンやTdapワクチンを接種することを非常に躊躇している」と回答した妊婦の割合が2019~20年から2022~23年にかけて増加した。しかし、医療従事者からワクチン接種を推奨された妊婦は、インフルエンザワクチンやTdapワクチンに対する抵抗が少なかった。

考察

 この調査の結果、妊婦の約半数がインフルエンザワクチンまたはTdapワクチンを接種しておらず、両方のワクチンを接種したのはわずか4分の1であった。これによって、妊婦自身とその乳児がインフルエンザや百日咳に感染しやすい状態にあることが示された。インフルエンザワクチン接種率は依然として低く、2019-20シーズンと比べて10%ポイント以上低かった。この結果はCOVID-19のパンデミック以降、妊婦のインフルエンザワクチン接種率が減少していることを示すほかのデータソースと一致している。Tdapワクチンの接種率は前シーズンと比較して約10%ポイント増加しているが、2022-23シーズンの接種率は2019-20シーズンおよび2020-21シーズンと同程度である。妊婦の約4分の3が、2価のCOVID-19ワクチンの追加接種を受けていなかった。そのため、入院や死亡を含む重度のCOVID-19や妊娠合併症のリスクが高まる可能性がある。

 妊婦のワクチン接種率を向上させるための取り組み(医療従事者によるワクチン接種の推奨や、ワクチンへの躊躇に対処するための患者との有益な会話など)を推進することは、ワクチンへの躊躇を軽減し、ワクチンの接種率を高めることによって、母親と乳児を重度の呼吸器疾患から守る可能性がある。

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*INFECTION CONTROL33巻2月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。