赤ちゃんと出会い、家族としてのスタートを切る周産期という時期は、「生」と「死」が近接した時期であり、自分の守りが揺らぎ、誰もが不安定になりやすい時期です。自分がこれまで対処してきたやり方が通用しないことが起こり、周囲の人との関係性も変わらざるを得なくなり、何が正解かも分からない中で、親としての新しい一歩を踏み出すことになります。多くの場合は、周囲から温かく見守られ、親としての自分を支えてもらい、赤ちゃんとの関わりを後押ししてもらうことで、少しずつこの時期を乗り越えていきます。
しかし、もともと精神的な不安定さを持っていたり、社会経済的な課題を抱えていたり、妊娠・出産が思いもよらない事態に直面したりする場合、足元が揺らいでしまうようなことも起こってきます。また、支援者は、親が精神的な不安定さを示したり、子育てが十分できない可能性を感じたりしたときに、さまざまなリスクが頭をよぎり、何かをしなければと思ってしまうこともあるでしょう。医療機関は、一時期のみの、非日常の中での出会いであり、家族と子どもはやがて地域に戻っていきます。
次の支援へとバトンタッチをしていくために、私たちがどんな支援をすることができるのかなど、本特集では、皆さんが戸惑いを感じる場面をいくつか取り上げています。この特集が皆さんにとって一度立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。
プランナー
名古屋大学心の発達支援研究実践センター
こころの育ちと家族分野教授
永田雅子
本記事は『with NEO』2023年6号特集扉からの再掲載です。