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トップページ 感染症・感染管理/インフェクションコントロール 【連載】CDCガイドラインニュース「集中治療室におけるカルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性緑膿菌の伝播」

矢野邦夫先生に「集中治療室におけるカルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性緑膿菌の伝播」についてご執筆いただきましたので、掲載いたします。


集中治療室におけるカルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性緑膿菌の伝播

 米国アイダホ州において、集中治療室の病室で環境を介したカルバペネマーゼ産生カルバペネム耐性緑膿菌(carbapenemase-producing carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa,CP-CRPA)のクラスターが発生した。CDCが詳細を報告しているので紹介する[https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/ pdfs/mm7231a2-H.pdf

事例

 アイダホ州の病院(病院A)の集中治療室の同一病室(病室X)において、滞在期間が4ヵ月離れていた2人の患者(患者1および患者2)の喀痰からCP-CRPAが検出された。患者1は50~65歳の女性であり、病室Xに入院していた5週間のうち3週間、人工呼吸器を使用していた。2021年9月17日に5回目の喀痰検体からCP-CRPAが分離されたため、病院感染が示唆された。患者2は65歳以上の女性であり、病室Xにて人工呼吸器を4週間使用していた。2022年1月25日に3回目の喀痰検体からCP-CRPAが分離されたため、病院感染が示唆された。両方の分離株は、メタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子(blaIMP-84)をもち、multilocus sequence typingではST235であった。

環境培養と対応

 アイダホ州公衆衛生局の医療関連感染症チームは、2022年3月21~22日にかけて病院Aを訪問し、環境サンプルを収集した。病室Xの一つのシンクのスワブサンプルからblaIMP-84を含むCP-CRPA ST235が検出されたため、これが環境感染源であることが示唆された。そのため、感染対策として「排水管バイオフィルム消毒薬を使用する」「再開時に病室Xに滞在予定の患者(次の10人の患者など)をスクリーニングする」「公衆衛生研究所の検査室にCRPAの分離株を継続的に提出する」が推奨された。その後、環境サンプリングを繰り返してもCRPAは分離されなかった。2022年12月の時点で、病院Aから追加のCP-CRPA分離株は報告されていない。

考察

 CP-CRPAは、ヒトからヒトへ、そして、シンクの排水管やトイレなどの環境感染源から広がる可能性があるため、医療現場では非常に伝播しやすい。この調査によって、「入院患者2人のbla IMP-84を伴うCP-CRPAのクラスターが発生した」「ヒトからヒトへの伝播がない」「一つのシンクが病室XでのCP-CRPAの環境感染源の可能性がある」が明らかにされた。CRPAのリスク因子には入院(特に人工呼吸器を付けている期間)が含まれる。このクラスターの患者は、両方とも人工呼吸器を長期間使用しており、人工呼吸器関連感染症の監視のために定期的に喀痰培養検査を受けていた。患者1と患者2の間に病室Xに入院した16人の患者のうち、入院中に呼吸器検体が培養されたのは5人だけで、どの検体からもCP-CRPAは分離されなかった。滞在期間が短かったり(12日以内)、人工呼吸器が使用されなかったりしたことが、伝播のリスクを減少させた可能性がある。

 CP-CRPAは環境(特に建物内の配管内に形成されたバイオフィルム)に残留するため、病室X内の排水管がサンプリングされた。そして、一つのシンクから収集されたサンプルから分離されたCP-CRPA株は、臨床分離株と遺伝的に類似していた。CP-CRPAのバイオフィルム形成を阻害するための排水管消毒の最適な頻度はまだ確立されていないが、いくつかの研究結果によると、 3~7日ごとに消毒薬を繰り返し適用することがグラム陰性菌の量を減らすのに効果的である可能性がある。


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*INFECTION CONTROL32巻12月号の掲載の先行公開記事となります。

*本記事の無断引用・転載を禁じます。