授乳する女性に向けた妊娠期~産後における乳房ケアの特集は、これまで数多く発刊されてきました。本誌「ペリネイタルケア」でも、産婆時代から伝承的に受け継がれてきたケア、病棟で行われているケア、文献を元に知識を整理しその根拠を紹介するものなど、乳房ケアに関する解説が過去に数多く取り上げられ、その内容が非常に充実していることは周知の事実です。
今回の特集では、滋賀医科大学 臨床看護学講座(母性・助産)に所属する研究者らが、科学研究費補助金やそれ以外の研究助成、産学連携事業での共同研究で取り組んできた乳房ケアの効果・有効性に関する研究成果を取り入れながら、そのエビデンスを分かりやすく解説していきます。乳房や乳頭トラブルに関する臨床疑問を研究疑問に設定し、系統立てて真摯に研究へ取り組み、生み出された成果は、国内・海外の学術誌に掲載されています。
さらに、滋賀医科大学医学部附属病院 母子診療科では、助産師外来の金曜日枠に“乳房外来”を開設しています。この外来の担当助産師をプランナーである私が担い、1日に約6名前後、乳房ケアを必要とする母児へ、継続した切れ目ない看護を実践しています。特集内の事例紹介においては、この乳房外来で経験した事例から、母親が抱えるトラブルの解決に必要なケアに関する具体的な内容を盛り込みました。
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本特集のテーマは“乳房をケアリングする”です。「ケアリング」とは、「ケアを受ける側がケアを通してより良い状態になること」を意味するばかりでなく、「ケアを提供する側も自己の成長を実感していける」という、ケアを受ける側と提供する側の双方が共にケアによって作用し合い、高められる関係性にあることを意味しています。
プランナー
滋賀医科大学臨床看護学講座(母性・助産)教授
立岡弓子
本記事は『ペリネイタルケア』2023年1月号特集扉からの再掲載です。