Q1.ジャン・ピアジェ(Piaget, J.)の認知発達理論の説明として誤っているものを選択せよ。
A.感覚操作期、具体的操作期、形式的操作期、前操作期に大別される
B.この理論における各時期の正しい順序は、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期である
C.具体的操作機においては、目の前に具体的な物があれば、論理的な操作が可能である
D.いわゆる「三つ山課題」が正しく答えられないのは、前操作期である
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Aが正解です。ピアジェによる認知発達理論は、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期に大別されます。感覚運動期は感覚と運動が表象を介さずに直接結びついる時期、前操作期は概念の獲得が不十分であり、いわゆる「三つ山課題」など他者の視点の理解が困難であることから自己中心性が高いと説明されることが多いです。具体的操作期とは、目の前に具体的な物があれば論理的な操作が可能となる時期のこと(例えば、いわゆる算数セットのおはじきやマグネットなどを使えば、簡単な計算を行うことができる)であり、形式的操作期とは、具体的な物が目の前になくても論理的な操作が可能な時期のこと(例えば、いわゆる”頭の中”だけでさまざまな計算ができたり、公式を利用するなど、必ずしも目の前で生じている事象でなくとも認知的な処理を行うことが可能)です。
Q2.発達心理学に関する記述として誤っているものを選択せよ。
A.レフ・ヴィゴツキー(Vygotsky, L. S.)は、発達の最近接領域という概念を提唱した
B.ロバート・ハヴィガースト(Havighurst, R. J.)の発達課題の概念は、単なる理論的な記述にとどまらず、各段階における教育目標でもあるとされる
C.道徳性の心理学の代表的な研究者として、ローレンス・コールバーグ(Kohlberg, L.)が知られている
D.発達心理学研究における縦断的研究とは、ある時期に異なる年齢集団を対象として、データを集める方法であり、長所として、広範囲で多量のデータを短期間で集められることが挙げられる
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Dが正解です。Dは発達心理学研究における横断的研究の説明です。ちなみに縦断的研究とは、同一の対象者(群)に、その成長とともに数年にわたって周期的に検査や調査などを継続して行い、データを収集していく方法です。特定の個人や集団の実際の発達の経過をとらえることができることが長所として知られています。
Q3.社会性の発達に関する説明として正しいものを選択せよ。
A.いわゆる第1次反抗期は、自我の独立のために必要とされている
B.児童期中期以降において自発的に形成される非公式集団を母集団と呼ぶ
C.心理的離乳は幼児期に起こるとされる
D.遊びの発達における最終段階は、協同遊びである
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Dが正解です。遊びの発達は一般に、一人遊び、傍観遊び、平行(並行)遊び、連合遊び、協同遊びの順で進行するとされています。Aは自我の独立ではなく自我の芽生え、Bは徒党集団(または、この年代を指して「ギャング・エイジ」と呼ぶことがあります)、Cは幼児期ではなく青年期に起こります。
Q4.愛着に関する説明として誤っているものを選択せよ。
A.アンタゴニズムに関する一連の研究は、心理学における愛着研究の起こりとして位置づけることができる
B.ジョン・ボウルビィ(Bowlby, J.)は、ホスピタリズムの研究から発展してマターナル・デプリベーションの概念を提示した
C.ルネ・スピッツ(Spitz, R. A.)は、生後6カ月の間、主たる養育者と良好な関係を持っていた子どもを主たる養育者から引き離した際に生じる症状をアナクリティック・ディプレッションと呼んだ
D.内在化された主たる養育者との愛着イメージを「内的ワーキングモデル」と呼ぶ
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Aが正解です。心理学における愛着研究の起こりとして位置づけることができるのは、アンタゴニズムではなくホスピタリズムです。20世紀初頭に児童保護施設や乳児院などの入所児の死亡率の高さが指摘され、その原因とされた栄養面と衛生面の改善が図られたのですが、死亡率の大幅な低下と同時に、精神発達、パーソナリティ発達上の問題が指摘されるようになりました。その結果、主たる養育者との情緒的つながりの重要性が指摘される契機となっていきました。
Q5.原始的反射として分類されるこが一般的ではないものを選択せよ。
A.吸啜反射
B.バビンスキー反射
C.モロー反射
D.リトバルスキー反射
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Dが正解です。新生児期は環境に対して柔軟に適応できるように反射機能が備わっています。吸啜反射とは、口の中に何か入ったときに吸おうとする反射です。この反射があるために赤ちゃんは母乳やミルクを飲むことができます。バビンスキー反射とは足の裏をくすぐると指が扇型に反るように広がる反射のことで、モロー反射とは赤ちゃんの周りで急に音を立てたり、仰向けに抱っこした状態で急速に下降するような運動をした場合に、赤ちゃんが両腕を伸ばして抱きしめるような動作をする反射のことです。
Q6.発達心理学における遺伝と環境論争における説明として誤っているものを選択せよ。
A.独立要因説は孤立要因説とも呼ばれる
B.遺伝要因を重視する説を生得説と呼ぶ
C.遺伝と環境が単なる加算ではなく互いが相乗的に作用し合って発達を決定すると考える立場を相互作用説と呼ぶ
D.いわゆる「性白紙説」は、生得説の典型的な例である
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Dが正解です。ジョン・ロック(Locke, J.)による性白紙説は、ラテン語で「ぬぐってきれいにした石板」を意味するタブラ・ラサ(tabula rasa)という言葉に代表されるように、人間のさまざまな心理的・行動的特質は経験を通じて形成されていくという立場です。よって、経験説に位置づけられます。
Q7.エリク・エリクソン(Erikson,E.H.)による心理社会的発達段階理論における老年期の発達段階として適切なものを選択せよ。
A.「世代性」 対「停滞」
B.「自発性」 対「罪悪感」
C.「統合性」 対「絶望」
D.「親密性」 対「孤立」
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Cが正解です。心理社会的発達段階理論による老年期の発達課題は、「統合性」対「絶望」です。この段階は、これまでの人生を振り返り、死という人生の終末に向かって自らの人生を受け入れて統合的な見方を獲得していくことが課題とされています。この課題へのつまずきは、自分の人生に対する失望や後悔が前景に立ち、絶望感を多く抱くこととされています。
Q8.下記の文章のうち、発達心理学に関する概念の説明として不適切なものを選択せよ。
A.双生児研究は、発達における遺伝・環境要因の関係についての解明に用いられることがある
B.発達加速現象は日本においても見られる現象であるが、近年は停滞化が認められる
C.刻印づけには臨界期が存在する
D.心の理論とは心理学における理論の総称である
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Dが正解です。心の理論(theory of mind)とは、自己や他者の種々の心的状態を弁別したり、心の性質や機能を理解する知識や認知的能力を指すものです。発達心理学において、1980年代以降、重要なテーマの一つとして位置づけられるようになっており、乳幼児期を中心に、自己または他者の心の理解の問題として多くの研究が行われています。
■監修:長内優樹(Secondary, LLC)