新生児医療に出会ったから…
約30年前、新生児医療に出会っていなくても、私は看護師を続けていたかもしれません。小さいころから優等生ではなく、コツコツ努力型でもない私でしたが、何でも楽しく感じることができる特技? を持ち合わせていたことが、今の私を作り上げているからです。
誰もが幸せな人生以外は望まないと信じていますが、新生児医療に関わっていると、それは新生児美化論だったのかと思うことがあります。現場は、一瞬も見逃せない張り詰めた緊張感、想像からは考えられない家族の言葉、多職種でのいびつな人間関係……、あまりに非日常であり、心が追いつかない出来事が次から次へと起こります。子ども、家族だけではなく、医師や看護師、多くの医療者の忘れられない場面は、溢れ出す涙かもしれません。
一方で、「新生児医療が好き」という医療者もたくさんいます。もちろん私もですが、理由は正直分かりません。全疾患、成長・発達、急性期、退院支援、家族看護、感染管理、意思決定を含む倫理観など、語り尽くせない新生児医療はとても魅力的です。全てにおいて前例はなく、誰一人同じではありません。そんな、像(かたち)なきことに関われる喜びが私の新生児医療の原点かもしれません。
新生児医療の現場以外に多くの経験をさせていただきました。まだまだ知らない、未経験の領域があることは十分理解していますが、それでも新生児医療はチーム医療そのものと自信を持って語れます。そもそも、子どもと家族の命を育むという壮大な作業を一人でできるわけもなく、多くの専門職が互いを尊重し、それぞれが最高のパフォーマンスを提供することが子どもと家族の最善だと思っているからです。さらに子どもと家族は単に提供を受けるだけでなく、自らも共に進む一員です。根っから体育会系の私は、苦楽を共にし、皆で創り上げる、この過程が好きなのかもしれません。
新生児医療に出会っていなくても、看護師は続けていたかもしれません。でも、新生児医療に出会えたことは、おそらく私を飛躍的に成長させてくれたことに間違いありません。とんでもなく破天荒な私を育ててくれた多くの子どもたちと家族、そして新生児医療に関わる全ての皆さまに心から感謝しています。できればこの先、微力ながら、新生児医療に恩返しできたらと思う、今日このごろです。
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院看護部
看護副部長、新生児集中ケア認定看護師
平岩美緒
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す!がおのひとこと
仕事で何百?何千人?の赤ちゃんを抱かせていただきました。みんなかわいかったです。
でも!でも!誰に何を言われても、やっぱり二人の娘と、二人の孫以上にかわいい赤ちゃんはいません。
元気に仕事ができることも、いつも笑顔でいられることも、ここが私の源です。
本記事は『with NEO』2024年1号の連載「新生児医療の あ!のひと」からの再掲載です。